【時代劇が面白い】金宗瑞襲撃事件/康熙奉の朝鮮王朝人物史5

朝鮮王朝を揺るがす大事件が起こったのは1453年10月10日でした。この日、首陽大君(スヤンデグン)が金宗瑞(キム・ジョンソ)の邸宅を急に訪問したのです。そのとき、どんな出来事があったのでしょうか。

首陽大君の奇襲

起こった出来事をまとめておきます。
◆首陽大君という有力な王族が訪ねてきたわけですから、金宗瑞もむげに断れません。屋敷の門のところに出てきた金宗瑞は、「どうぞ、中へお入りください」と首陽大君をうながします。しかし、首陽大君は門の中に入りません。「屋敷に入ったら殺されるかもしれない」と警戒していたわけです。
◆首陽大君は自分の紗帽(サモ)の角が1つなくなっていることに気づきました。この紗帽というのは、上流階級にいる男性がよくかぶる公式的な冠で、横に広がる羽のような角が後ろに2つ付いています。首陽大君がかぶっていた紗帽はどういうわけか角が1つ欠けていました。そこで首陽大君は金宗瑞に対して「角を1つ貸してくれないか」と頼みました。
◆金宗瑞は長男に「持ってまいれ」と命令しました。そのときまでずっと長男が金宗瑞に付いていたのですが、これで金宗瑞は1人になってしまいます。

◆その機会を逃さず、首陽大君は書状を金宗瑞に渡して「重要なことが書いてあります」と言います。
◆金宗瑞は書状を受け取って読もうとしましたが、すでに暗くなっていてそのままでは読めませんでした。
◆そこで金宗瑞は、月に照らして読もうとしました。つまり、金宗瑞は無防備になったのです。その瞬間、首陽大君は従者の1人に合図をしました。
◆すかさず、従者が懐に隠していた鉄槌を取り出して、それを金宗瑞に向かって振り降ろしました。
◆鉄槌を受けた金宗瑞はその場に倒れこみました。急を知って長男が駆けつけてきて、金宗瑞を助けようとしましたが……。
◆もう1人の従者が隠し持っていた刀で長男を切りつけました。こうして、首陽大君の急襲は成功したのです。
以上の出来事が、「朝鮮王朝実録」に書かれていることです。

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

コラム提供:チャレソ
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2021.05.14