高句麗(コグリョ)・百済(ペクチェ)・新羅(シルラ)が覇権を争った三国時代。その三国に続く勢力を持っていたのが、小国の連合体である伽耶(カヤ)だ。伽耶については史実上、謎が多く、その初代王・金首露(キム・スロ)にしても神話的な要素が強い。歴史的な資料が乏しく、史実と神話の境界があいまいなのだ。金首露はいったどんな王だったのか。
伽耶に落ちた奇跡の卵
彼の生誕にまつわる神話は、次のようになっている。
小さな部族の集合体だった伽耶には、国を統治する王がおらず、9人の部族長たちが地域を治めていた。彼らは毎年3月になると、伽耶の聖地である金海(キメ)にある亀旨峰(クジボン)に民を集め、祭事を行なった。祭事では、みなが天に向かってこう合唱した。
「私たちを統(す)べる王をください」
毎年行なわれるこの行事に天界もうんざりしていた。ある年、いつものように合唱を行なうと、亀旨峰に向かって空から紫色のひもが垂れてきた。ひもの先には赤い絹に包まれた黄金の箱が掛かっていた。その箱を開けると、中には黄金の卵が入っていた。伽耶の民は、最初は驚いたが、すぐに歓声をあげて空から落ちた奇跡の卵を崇拝した。
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