放送から何年経っても色あせないドラマがある……というより、時間を経て味わいが一層深くなるドラマがある。『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』は、まさにそんな作品だ。見る度に、まるで神秘の世界を旅するような感覚にとらわれる。
人間の生死を見つめる
『トッケビ』はファンタジーなのか。
あるいは、大人のためのおとぎ話なのか。
そんなことを考えていて、ふと気づいた……『トッケビ』は今までにない神秘性を持ったドラマで、ジャンルを特定することができないのだ、と。
そうなのだ。このドラマに描かれる世界は、時空を超えて縦横無尽に広がっていた。
コン・ユが演じたのはキム・シン。高麗時代の武将で現代まで900年以上も生き続けている男だ。
彼は、王に裏切られて、胸に剣が刺さったまま死ぬことができず、過去から現代までトッケビとしてさまよっている。
この主役の設定に度肝を抜かれた。
今までのドラマで、これほど奇想天外なキャラクターがいたかどうか。
つくり出したのが、脚本家のキム・ウンスクだ。過去に『シークレット・ガーデン』や『太陽の末裔』を書いていて、発想の豊かさに定評がある。
そんな大物が、『トッケビ』という、謎めいた住人たちを通して人間の生死を根源的に見つめるドラマを書いた。
本当に奇怪な展開だらけだが、見ていると、自然に、不思議な世界を奔放に旅する快感を味わわせてくれる。
このドラマの真髄は、人間の輪廻転生が重層的に描かれているところだ。
主人公のキム・シンはこう語る。
「人間は生まれ変わって四度の人生を経験する。一度目は種を植え、二度目は水をやり、三度目に収穫して、四度目に食べる」
このセリフが何度も出てくる。
その度に、視聴者は思いをめぐらせる……いったい、自分は何度目の人生を歩んでいるのだろうか、と。
あるいは、もう四度目になってしまったのか、と。
たとえ輪廻転生を信じなかった人ですら、『トッケビ』を見ると、気持ちが変わってくるのでは……。
キム・シンというキャラクターについて、演じたコン・ユが解説してくれた。
「900年はとてつもなく長い時間です。キム・シンが屋上から世の中を見下ろしているとき、その表情はいつも寂しそうでしたが、それは人生を達観していたからではないでしょうか」
(ページ2に続く)
『トッケビ』から2年!黄金の40代に入るコン・ユの情熱とは?