それは1800年6月のことだった。正祖(チョンジョ)は急な発熱で体調を崩した。からだに大きな腫れ物もできた。その痛みに苦しみながら、彼は薬を調合する現場を自ら視察している。毒殺されることを極度に警戒していたからだ。
徐々に衰弱していく正祖
正祖が苦痛を明らかにしたのは1800年6月だった。
「痛みがあって苦しい。熱があるのに寒けもする。意識も朦朧(もうろう)とするときがあって、夢を見ているのか目覚めているのか、まるでわからない」
内医院(ネウィウォン/王族を診察する医院)の高官だった李時秀(イ・シス)が言った。
「腫れ物の患部を診察すれば処方について話し合えるのですが、医官たちがみんな診察できないと申しております。その者たちがいつも診察できるようにされるのがよろしいかと存じますが……」
李時秀がこう言ったのは、正祖が患部を医官に見せなかったからだ。正祖は医官たちを信用していなかった。
6月27日、李時秀が正祖に聞いた。
「昨日の夕方、殿下を診察しましたが、まるで眠っていらっしゃるように朦朧とされていましたが、今も同じですか。夜もずっとそういう状態だったのでしょうか」
すると正祖は「夜が明けるまでのことをこまごまと話すのは難しい」と言った。
以下は、李時秀と正祖のやりとりだ。
李時秀「医官たちと一緒に煎じ薬について話し合います」
正祖「キョンオッコ(薬の名)は昨日も服用したが、こんな(蒸し暑い)時期には効果があまりない」
李時秀「キョンオッコはゆっくりと養生するときの薬ですから、すぐの効果を期待するのは難しいようです。他の煎じ薬と一緒に服用するのがいいでしょう」
正祖「今後は病状にすぐ効く薬を使ったほうがいい」
李時秀「お食事はどのくらい召し上がっていますか」
正祖「食欲がますますなくなっている」
李時秀「煎じ薬をすぐに決めてまいりましょうか」
正祖は李時秀の言葉にうなずいた。
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