韓国の世論が兵役の履行に厳しい目を向けるようになったのは、2000年前後からである。「特権階級の子息の場合、兵役の免除率が30%を超える」という事実がテレビ局で報道されるようになってからだ。
かつての実例
一般の男子の兵役免除率は5%と言われている。
それなのに、2000年頃には国会議員・財閥役員・高級官僚などの息子の免除率は30%を超えると報道された。
つまり、特権階級が地位を利用して意図的に息子の兵役をのがれているという不公平な実態が明るみになって、国民が兵役の履行に厳しい目を向けるようになったのだ。
その中で、芸能人の兵役が目立つようになってきた。
韓国で大人気だった歌手のユ・スンジュンは、2002年にアメリカの市民権を獲得して韓国国籍を放棄した。
これが「兵役のがれ」だと批判を受け、その声を無視できず韓国の法務省はユ・スンジュンが韓国に入国できない措置を取った。彼はファンから「裏切り者」と罵倒され、以後も韓国で活動できなくなった。
厳しい目を向ける人たち
2004年には、ソン・スンホンやチャン・ヒョクが意図的に兵役をのがれていた過去が明らかになり、国民の怒りを買った。ソン・スンホンは心から謝罪し、改めて最前線の軍務に就いた。
2013年には軍の広報支援隊員(いわゆる芸能兵)として兵役中だった芸能人が相次いで軍務違反を起こし、広報支援隊員の制度そのものが廃止になっている。
こうしたことが起きる度に、国民は芸能人の兵役に厳しい目を向けるようになった。仮に芸能人が「国を愛する気持ちがない」とファンに思われたら、その芸能人の人気凋落は避けられない。それほど、芸能人にとって兵役はデリケートな問題になっている。
特に、芸能人の兵役に厳しい目を向けているのが、現役兵としての兵役を終えた男性たちである。
彼らは、韓国に生まれた男子の義務として兵役を忠実に履行してきた。軍務が過酷であればあるほど、それをやり終えた誇りが大きいのである。
その気持ちが強すぎるがゆえに、たとえば「アクションをこなしている俳優が社会服務要員になっている」「早く兵役に就けばいいのに、入隊延期を繰り返している」「徴兵検査で兵役免除になっている」といったケースについて、批判的な声を大にするのだ。
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