「コラム」ポン・ジュノ監督も標的となったブラックリスト事件とは何か

今年のアカデミー賞で主要な4冠を獲得した映画『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督は2月20日に大統領官邸に招かれ、文在寅(ムン・ジェイン)大統領から祝福を受けた。このポン・ジュノ監督がかつて保守政権から妨害を受けたことが明るみになっているのだが……。

政府が文化活動を阻害

それは、「ブラックリスト事件」と呼ばれる。
実は、文在寅政権の前に続いていた保守政権時代に起こったのが「ブラックリスト事件」だった。
この保守政権とは、2008年に発足した李明博(イ・ミョンバク)政権と、その後に続いた朴槿恵(パク・クネ)政権をさしている。この間に、政府に批判的な文化人や芸術家をリストアップして、その活動を妨害した事実が2017年に文在寅政権が誕生してから明るみになった。
それがブラックリスト事件だが、リストアップされたのは82人である。
すべて、芸術や文化で著しい活躍をしてきた人たちばかりだが、映画監督が特に多く、その中にポン・ジュノ監督の名前もあった。いわば、標的にされたわけだ。
リストアップされた82人は、その文化活動を政府によって阻害されている。
文在寅政権の文化行政を司る文化体育観光部(部は省に相当する)のト・ジョンファン長官がブラックリスト事件について公式的に謝罪している。

「国家が表現の自由を抑圧し、侵害することにより、多くの文化人・芸術家と国民に深い傷と痛みを残しました。政府を代表して、心からお詫び申し上げます」
長官の謝罪の意味は大きい。
政府が介入して、文化人や芸術家を抑圧するということは、民主国家では絶対にあってはならないことだ。
そういう意味でも、ブラックリスト事件が韓国社会に与えたショックは強烈だったと言える。
そのままポン・ジュノ監督がブラックリストに載っていたなら、『パラサイト』も作れなかったかもしれない。

文=康 熙奉(カン ヒボン)

コラム提供:ロコレ
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