天才的な風水師が王座をめぐる争いを左右していく映画『風水師 王の運命を決めた男』が日本で公開中だ。風水師をチョ・スンウが演じ、チソンが王の座を狙う野心的な王族に扮している。
時代は1840年代
映画『風水師』の冒頭で世子(セジャ)が毒殺される場面が出てくる。
この世子が、あの孝明世子(ヒョミョンセジャ)である。ドラマ『雲が描いた月明り』でパク・ボゴムが演じたイ・ヨンのことだ。
史実での孝明世子は将来をとても嘱望されていたのだが、21歳のときに急死してしまった。
毒殺された疑いがあった。映画はその疑惑をうまく場面に使っている。
この『風水師』が描いているのは1840年代だ。
当時は孝明世子の息子の憲宗(ホンジョン)が国王になっていたが、権力を握っていたのは安東(アンドン)・金氏(キムシ)の一族だった。
この一族は孝明世子の母の実家であった。
朝鮮王朝は強欲な一族に権力を独占され、政治が腐敗していった。こうした歴史的な背景を知っておくと『風水師』の描く世界にワクワクする。
実際、憲宗はなんの権力も持っていなかった。そんな状況に憤慨していた王族が興宣君(フンソングン)だった。
傑作の活劇
興宣君は王族とは言っても末端にいたので経済的に困窮し、安東・金氏に対して物乞いのようなことばかりしていた。
そのあたりは映画の中でたっぷり描かれていて、チソンが扮した興宣君は無様な姿を何度もさらけだしていた。
それは、安東・金氏を油断させるためだ。興宣君は息子を国王にしたいという野望を持っていて、そのために策を練っていたのだ。
そうした時代の混乱を、『風水師』は様々な史実を巧みに生かして描いている。特に、実在の人物と架空の人物を絶妙に組み合わせているところが見事だった。
架空の人物の代表が天才的な風水師のパク・ジェサンである。チョ・スンウが重厚に演じている。
そして、チソンの演技もいい。俳優たちの見事な熱演のおかげで、『風水師』は歴史に裏付けされた傑作の活劇になっていた。
しかも、ストーリーが二転三転して最後まで展開が読めない。シナリオが本当によくできている。
文=康 熙奉(カン ヒボン)