朝鮮王朝の21代王の英祖(ヨンジョ)は、韓国時代劇によく登場する国王だ。しかし、82歳まで生きて国王の中で一番長生きだったので、ベテランの俳優が演じることが多かった。そんな流れの中で、時代劇『ヘチ』で若き日の英祖を演じたのがチョン・イルであった。
息子は思悼世子
歴史的に、英祖はどんな国王だったのか。
なんといっても、英祖といえば1762年に起こった大事件で有名である。
それは、次の国王の座が約束されていた思悼世子(サドセジャ)を米びつに閉じ込めて餓死させた事件だ。
あまりにも悲惨な出来事であり、息子を米びつに閉じ込めた英祖は、無慈悲な父と思われてきた。
確かに、やってはいけない暴挙である。
しかし、英祖はなぜそこまでやらなければならなかったのか。
「朝鮮王朝実録」の記述をこまめに読んでいくと、英祖が朝鮮王朝の王位継承を深刻に憂慮していたことがわかる。
思悼世子は頭脳明晰な世子(セジャ)であったはずなのに、成長するとともに酒乱で素行が悪くなり、側室を殺したり家臣に暴力を振るったりしていた。しかも、怪しげな人物たちと放蕩を繰り返した。
父親の英祖は、思悼世子が本心から反省をして素行を改めることを願っていた。そのためにきつい叱責をしたことが何度もある。
それでも、思悼世子は同じことを繰り返しており、最後は英祖も耐え忍ぶことができなかった。
とにかく英祖は、「連綿と続いてきた朝鮮王朝の王位継承を、自分の代で決して終わらせてはならない」という強い使命感を持っていた。
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