哀れな最期
田舎で隠れて住んだ尹元衡と鄭蘭貞だが、生きた心地がしなかった。新しい政権にいつ死罪にさせられるかとビクビクしていたのだ。
あるとき、近所に都から使者がやってきた。
その話を聞いた鄭蘭貞は震えた。
「自分たちを殺しにきたのだ」
そう観念した。
悲観した彼女は、ついに毒薬を呑んで命を絶った。
それは早とちりで、使者が向かったのは別人のところだった。
尹元衡は悲嘆に暮れたが、それは後の祭りだった。彼も世を嘆き、鄭蘭貞の墓の前で自決した。
こうして、悪徳夫婦は哀れな最期を迎えた。
頼りの文定王后が世を去った時点で、もはや尹元衡と鄭蘭貞には生きる望みがなかった。自滅するのも歴史の必然だったのだ。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
『オクニョ』について紹介している『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』(康熙奉〔カン・ヒボン〕著〔実業之日本社/900円+税〕)
康 熙奉(カン ヒボン)
1954年東京生まれ。在日韓国人二世。韓国の歴史・文化と、韓流および日韓関係を描いた著作が多い。特に、朝鮮王朝の読み物シリーズはベストセラーとなった。主な著書は、『知れば知るほど面白い朝鮮王朝の歴史と人物』『朝鮮王朝の歴史はなぜこんなに面白いのか』『日本のコリアをゆく』『徳川幕府はなぜ朝鮮王朝と蜜月を築けたのか』『悪女たちの朝鮮王朝』『宿命の日韓二千年史』『韓流スターと兵役』など。最新刊は『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』。
コラム提供:ヨブル
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