「コラム」連載 康熙奉(カン・ヒボン)のオンジェナ韓流Vol.66「部隊で携帯電話が使える時代」

韓国では2000年以降に極端な少子化になってしまい、2020年以降に兵役対象者の減少が深刻化すると予測されている。そんな状況だからこそ、国防省では現役兵の待遇を改善しようと躍起になっている。その一つが携帯電話の使用なのだが……。

今までは厳禁

このところ、兵役制度の改革が急ピッチに進んでいる。

その際の改善規定は以下の数々だ。
◆兵役期間の短縮が実現し、陸軍は従来の21カ月から18カ月に短縮される。
◆兵役で現役兵となった兵士の給与を大幅に引き上げる。
◆違反をおかした兵士への懲罰制度を改善する。
◆平日の自由時間の外出を許可する(回数に制限がある)。
こうした改善規定と並んで国防省が力を入れているのが、部隊の中で携帯電話を使えるようにすることだ。
これは、本当に画期的だ。
今までは部隊の中で携帯電話を所持することは厳禁だった。情報が漏れることを警戒すると同時に、風紀が乱れることも心配の種だった。
しかし、今はそんなことを言っていられる時代ではなくなった。
携帯電話を四六時中に使うのが現代の若者たち。それが兵役で部隊に入ると、持つことすら禁止されてしまう。
そのストレスは甚大で、気分がふさいでしまう若者たちが本当に多かった。「社会から隔絶されて疎外感にさいなまれる」という声も起こっていた。

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現役兵の不満を抑えるために

現在の文在寅(ムン・ジェイン)政権は「部隊生活の改善」に特に力を入れており、その政策の中で、自由時間に携帯電話を使えるような大転換がはかられたのだ。
その結果、4月から部隊の中でも平日の夜と休日に携帯電話を使えるようになった。それによって現役兵たちは、携帯電話で情報を検索したり動画を視聴したりということが可能になった。
しかし、何でも自由というわけではない。やはり情報の漏れを防ぐために、撮影や録音などは禁止される。
あくまでも個人の趣味の範囲で携帯電話の使用が許可されるのだ。
ただし、国防省の心配は尽きない。

実は、携帯電話使用のテスト期間の間に、いくつかの不正が発覚したのである。たとえば、部隊の様子を撮影して配信してしまったり、ギャンブルサイトを見たり、アダルト映像を視聴するという例があった。
また、規定時間以外の使用も多かった。
こうした違反行為が起こったのは事実だが、それによって携帯電話使用の計画を中断するわけにもいかなかった。現役兵の不満を抑えるためにも、携帯電話の使用を容認せざるをえない時代なのだ。
4月からは、部隊の中で、平日の夜と休日の過ごし方がガラリと変わっている。少なくとも、兵士たちの「社会から隔絶されているという疎外感」は薄れてくると期待されている。

文=康 熙奉(カン ヒボン)

2019.04.13