初めて韓国に行くとき、母から「勘定でボラれないように気をつけて」と言われた。このアドバイスが効いた。少々のことでは驚かなかった。むしろ、相手がどの程度の金額を言ってくるのかを楽しむところもあった。
運転手が一枚上手
ソウルでタクシーに乗ると、遠回りをされることが何度かあった。私(康熙奉〔カン・ヒボン〕)は地図を見るのが好きで、どこを走っているかをいつも地図で確認していたから、すぐにわかった。
少々のことなら目をつぶっていたが、あまりに遠回りをされると、ムキにならないように注意しながら言った。
「なんで近い道を行かないんですか」
答えはきまってこうだった。
「渋滞に巻き込まれるから」
そう聞いて、それ以上は突っ込まなかった。本当に渋滞が理由のときもあるからだ。
あるとき、金浦(キムポ)空港からソウル中心部に行くとき、タクシーの運転手がこう言ってきた。
「メーターを倒さないから3万ウォンを払ってください。みんなそうしているから」
倍近く取ろうというわけだ。
それでも、私は「オーケー」と言った。とても愛想のいい運転手だったので、当時の韓国の世情について車内で聞こうと思ったのだ。
案の定、痛烈な政府批判が飛び出した。そういう話を聞くのが大好きなので、身を乗り出して運転手の話に耳を傾けた。
「3万ウォンでも安いくらい」
そう思ってタクシーを降りたのだから、運転手が一枚上手だった。
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