もしかして現代人も……
『トッケビ』の中で当初一番驚いたのが、コン・ユが演じるキム・シンは、胸に剣が刺さったまま現代をさまよっているという設定だ。「トッケビの花嫁」と呼ばれる女性を見つけて、その剣を抜いてもらわなければ安らぎの世界に行けない。
そんなキム・シンが同居しているのが、死にゆく人々を天界に導く死神だ。イ・ドンウクが演じているが、その存在はどこかコミカルで、死神らしくない。そこがまたドラマの狙いでもあるのだろう。
キム・シンは、ようやく「トッケビの花嫁」としてウンタクと出会う。この女性もまた普通ではない。自分にだけ幽霊が見えていて、キム・シンの命運を握る絶対的な存在にもなっている。
以上のように、『トッケビ』というドラマは、「こんなにも空想の世界を楽しませてくれるのか」というほどに神秘的だ。
そんな世界に酔いながらふと考えてみる。「現代人の誰もが胸に剣が刺さったまま生きているのではないか」と……。(ページ3に続く)