4年に一度、単一種目としては世界最大のスポーツイベント、「サッカーワールドカップ」。今回、2014年のブラジル大会の開幕で、日韓両国の景気回復への期待は大きい。
日韓両国においてサッカーは、野球に並ぶ二大人気スポーツの1つだ。代表戦の国際試合ともなれば、地上波でテレビ放送されることが多く、その視聴率は人気ドラマを上回る。
そして、サッカー界の最高峰である「ワールドカップ」期間の前後には、スポーツ・マスメディア業界だけでなく、各種外食・流通企業が様々な関連イベントやキャンペーンを展開する。W杯の中継により、消費者たちの購買意欲が刺激され、今では「ワールドカップ特需」という言葉も使われるようになった。
中でも飲食店でのテレビ観戦イベントや宅配フードは、テレビやパソコンのモニターによる観戦を、より楽しくするサービスである。当然、この業界は大きく盛り上がる訳だが、残念ながら今大会では、その特需への期待は薄い。
ブラジルと日韓の間には昼夜が逆になる12時間前後の時差が存在するため、試合はほとんどが早朝から朝にかけて行われるからだ。
飲食店や広場での応援を控える代わり、家のテレビ観戦で我慢するサッカーファンが増えるため、同じ成績を出すならば、前回よりはテレビ中継の視聴率がアップするはず。
そして、韓国では地上派3社(KBS、MBC、SBS)による同時中継が2大会ぶりに復活し、視聴率競争はすでにヒートアップした。
「韓国サッカーの生きた伝説」チャ・ボングン(車 範根)や「アジア初のプレミアリーガー」パク・チソン(朴 智星)、「2002年日韓ワールドカップのイケメン選手」アン・ジョンファン(安 貞桓)など、各社は人気サッカースターを起用しながら他局との差別化を図っている。
なお、前回の2010年南アフリカ大会の際にFIFA(国際サッカー連盟)から中継権を購入したのは民放のSBSだった。約70億円という巨額の独占契約で、最終的に73億円の広告収入を得たと伝えられている。
ただ、韓国放送通信委員会から「中継を独占し、視聴者の観る権利を制限した」として、約2億円を課徴金として徴収されたので、実際には約1億円の収益にとどまった。
今回の中継権も同じくSBSがFIFAから約80億円で購入したようだが、他局のKBSとMBCに再販売したことで地上波の同時中継が実現した模様。
その分、合計視聴者数は増えるはずで、広告売上の規模は約100億円にまで拡大するとみられていた。日本ではあまり数字の発表はないが、韓国の数字で見る限り、日本でも前回大会に比べて、広告売上のアップは期待されていたはずだ。しかし、今回は開幕から間もなく、日韓は約束でもしたかのように、1敗1引き分けの成績を出し、1次リーグ突破が非常に難しい状況。当然、広告売上の予想も崩れるはずだ。
約1か月の期間で延べ64試合、世界200カ国で数億人の人々が熱狂する「人類最大のイベント」と言っても過言ではないサッカーワールドカップ。コンテンツ業界としては、博打に近い投資が行われることもあるのだ。
W杯残りの期間、日韓では、巨額の中継権料を広告販売で回収しようとする放送局の熾烈な争いが繰り広げられそうだ。