「対立」と「和解」
韓国ドラマが成立するためにかならず必要なのが悪役だ。
その存在が重要な役回りとなる。
とはいえ、悪役をただ単純に性格が悪すぎるという具合に扱わず、「境遇や立場によって悪くならざるをえなかった」というふうに描く。
このように、韓国ドラマは明確な対立軸の中で、そうならざるをえなかった悪役を主人公の対極に位置させて展開されていく。
だからこそ、韓国のドラマはあれほど長く続けられるのだ。
そうしたドラマは現代の韓国社会の縮図でもある。ドラマが対立を描くのは、実生活でも随所で対立が起こっているからなのだ。
その原因になっているのは、「自分が言いたいことをかならず言う」という人たちが多いことだ。そういう人たちには「言いたいことを我慢して穏便にすませる」という考えがない。対立をおそれず自分を主張する……その結果として、みんなが対人関係で粘り強くなっていく。
同時に、対立は人間の奥に潜む感情まであぶりだす。その感情の発露もまたドラマチックだ。
韓国の人たちがあれほど人間味にあふれているのは、実生活の中で「対立」と「和解」を何度も繰り返しているからに違いない。
文=康 熙奉(カン ヒボン)