日本との往来がままならない時期でしたので、学生時代夏休みや冬休みに日本に帰るころになると下宿のおかずが急に良くなります。卵焼きや鯖の煮込みが出てきたりします。最初は下宿の主人の誕生日なのかと思ったりしましたが、それが日本から戻るときにお土産を買ってこいとの合図でした。
もちろんお金はもらいましたが、象印の炊飯器や魔法瓶、マクスウェルのインスタントコーヒー、女主人から頼まれたプリーツスカートや資生堂の化粧品など枚挙に暇がありません。買って帰るのは問題ありませんが、税関を通るのが苦痛でした。当時は今よりも税関が厳しく場合によってはカバンのすみずみまで調べられました。
学生が何でこんなに荷物が多く女物まで……、検査員の冷たい視線に耐えられず日本に帰ることが苦痛でしかたありませんでした。久しぶりに会う両親や友達、思う存分羽を伸ばせるはずの休みなのに、密輸業者のようにどうしたら税関を通れるかを考えるばかりで気が滅入りました。
休みで日本に帰ったら帰ったで、韓国からのお客さんのお供で必ず秋葉原に行き買い物を手伝わされました。ソニーのテレビやウォークマンなどの電気製品、資生堂の化粧品は羨望の的でした。
それが今はどうですか。秋葉原には韓国人はほとんど見られません。テレビや冷蔵庫はSAMSUNGかLGの製品が家電量販店に溢れ、まさかとは思いましたが、BBクリームなどの韓国製化粧品が日本の女性に人気だとは!!!
憧れの日本製品に引けを取らなくなった韓国製品の躍進に、少なからず韓国人は自信を持ちました。
それだけでなく、キムチをはじめ辛ラーメン、チャミスル(韓国のメーカー真露の焼酎)、マッコリ、チヂミなどの食品がたやすく買えるようになったのは、この時代からしたら夢のような話です。
文=権 鎔大(ゴン ヨンデ)
出典=『あなたは本当に「韓国」を知っている? 』(著者/権鎔大 発行/駿河台出版社)
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