かなり昔の話ですが、韓国がまだ経済成長をしていない時代、事務所を構える余裕がなかった人々は、喫茶店でたむろしながら、その店の電話番号をあたかも自分の会社の番号のように名刺に刷っていました。その喫茶店に電話が掛かり、お店の人が「金社長電話ですよ」と叫ぶと、そこにいたお客のほとんどが振り返りました。
他でお話ししたように韓国は五人に一人が金さんですから、みんな一斉に振り向いても不思議ではありません。けれども、苗字ではなく社長と叫んだだけでも反応するから驚きです。あたかもその喫茶店が会社の事務所であり、従業員がいなくても社長だと言っているからビックリします。さすがに日本人が同じ状況でも、喫茶店が会社で、店の人が従業員で自分が社長だと格好をつける人は少ないのではないでしょうか。
韓国人特有の見栄っ張りだといえるでしょう。本当の社長、つまり会社があり従業員がいて自前の電話がある人は、その机の上に貝で施された豪華なネームプレートを置いてその権威を内外に知らしめていました。不動産の紹介業を生業にする人ですら、このようなネームプレートを机に置いているくらいですから企業の会長らはさぞや豪華に違いありません。
今はそれほど派手ではありませんが、一部では残っています。韓国のドラマを見ると必ず豪華なネームプレート出て来ます。会社や団体のお偉いさんの部屋に行くと、必ずといっていいほど貝殻で細工されたネームプレートが机の上にデンと置かれています。
「取締役代表会長◯◯とか「△△理事長××」などとあります。無駄で悪趣味に見えないこともないのですが、見方を変えれば、ここまで誇れる地位に付けたのは自分の努力の賜物で、もっと高い地位に付き、もっと豪華なものを作るんだという発奮材料にしている面があると思います。昔のドラマや映画ほど地位(社長、会長など)と名前が書いてあるネームプレートが豪華なはずです。
文=権鎔大(ゴンヨンデ)
出典=『あなたは本当に「韓国」を知っている?』(著者/権鎔大発行/駿河台出版社)
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