「コラム」第5回 善徳女王の生涯(前編)/康熙奉(カン・ヒボン)の「簡潔に読む!韓国の歴史5」

牡丹の花には香りがない

善徳女王がいかに聡明であったかを物語るエピソードがある。それは、まだ徳曼が王になる前の話だった。

中国から牡丹の花の絵と種子が送られてきたので、父親の真平王は、娘の徳曼に喜んで見せた。

すると彼女は、牡丹の種子を見ながら「この牡丹の花は美しく咲くでしょうけど、きっと香りがないはず」と言った。

真平王は娘が変なことを言いだすので、笑ってしまった。

「なぜ花に香りがないとわかるんだ」

真平王がそう尋ねると、徳曼は堂々とこう言い切った。

「まず、牡丹の花の絵をご覧ください。この花に蝶がまったくいませんよね。たとえば、すてきな美人であれば、男性が次々に寄ってくるでしょうし、美しい花に香りがあれば、蝶や蜂が寄ってくるものでは……。この花を見るかぎり、いくら美しくても蝶や蜂がまったくいませんから、たぶん、香りがないのでしょう」

そう言われて父親の真平王も半信半疑だったが、実際に牡丹の種子を蒔いてみると、花には香りがなかった。

まさに徳曼の言うとおりになったのである。

この話が広まると、誰もが「いったい彼女はどれだけ頭がいいのだろうか」と大いに感心した。(3ページにつづく)

2016.09.11