第9回/イ・ジュンギ(中編)
なぜ、イ・ジュンギはファンのことを極限まで思い続けることができるのか。そのことを考えていくと、彼が長くファンに愛されている理由がわかってくる。「演技を長くするためには、ファンと離れてはいけないんです」という彼の言葉も頼もしい。
自分のありのままを見せる
スターにとってファンは、なくてはならない存在だ。
いや、ファンなしではスターというものは最初から存在できない。
星がいくら輝いても、それを見てくれる人がいないと何の意味もない。それだけに、スターがファンを大切にするのは当たり前だともいえるが、スターはときどきファンという存在を面倒くさがったり、知らない間に無視したりする。多くのスターがファンの愛情で育てられるが、後にはファンを軽んじる間違いをおかしやすいのだ。
特に、一朝一夕に人気を得たシンデレラ型のスターなら、どうしてもファンのありがたみがわかりづらい。
しかし、イ・ジュンギは、誠実にファンと接する。彼はファンと自分は一つの家族だという。つまり、ファンは俳優イ・ジュンギの成長を見守ってくれる家族のような存在なのだ。
だからなのか、イ・ジュンギのファンには中高年も多い。ファンは本当に、イ・ジュンギが自分たちの子供や甥であるように世話をする。イ・ジュンギをインタビューする雑誌社には、彼のファンクラブから餅が送られるというのはその一例とも言えるだろう。
ファンがこのようにイ・ジュンギを身近に感じるのは、彼が自分のありのままをファンに見せているからだ。もしイ・ジュンギが自分を隠したり飾ったりするスターだったら、ファンはこれほど彼を親しく思わないだろう。
長く演技できる俳優でありたい
実際のイ・ジュンギはどういう人間なのだろうか。
マスコミの間で彼は「人が好きで、酒好きで、明るい性格で、自分の考えを正確にアピールできる人」と評されているが、イ・ジュンギも「実際にそうです」と認めている。
「インタビューのときは、本当に秘密にしなければならないプライベートな部分の20%だけを除き、すべてをオープンします。インタビューでの姿が本当の僕だと思ってくれればいいですね」
ここまで本人が言い切ってしまうと、イメージ管理をしなくても大丈夫なのかと周囲が心配するほどだ。
それでも、イ・ジュンギはきっぱりと言う。
「かつてイメージ管理というものもやってみましたが、やればやるほどファンと離れていくような気がして嫌になりました。スターとしていられるためには、もう少し自分を神秘的に飾ったり、何かを隠したりしたほうがいいかもしれませんが、僕が夢見てきたのは長く演技できる俳優であって、決してスターではなかった」
このようにキッパリと言うイ・ジュンギ。その姿勢はずっと変わらないと彼は断言している。
「演技を長くするためには、ファンと離れてはいけないんです。身近で頼もしいイメージを作るのは大変難しいのに、自ら離れていく道を歩む必要はないと思います」
強い愛情と責任感
イ・ジュンギはデビュー以来、ただファンとダイレクトに接したいという想いで、自分のホームページ(一種の個人ブログ)を通して近況や考えを正直にアピールしたりしていた。彼は多くのファンとできるだけ素直に語り合いたかったのだ。
イ・ジュンギのこのような態度を、計算づくのものだと指摘する声もある。しかし、イ・ジュンギを少しでも気にかけて見ていると、彼がこのようにファンと積極的に話し合おうとするのは、純粋に性格によるものなのだとわかる。イ・ジュンギのファンへの思いに偽りはない。
一つのエピソードを挙げよう。
主演映画の『王の男』(2005年公開)が記録的な大ヒットをして彼の人気が絶頂のとき、ドラマの撮影で忙しいにもかかわらず、彼は1日に5カ所の映画館を回りながら舞台挨拶をこなした。
すでに公開して日も経ち、観る人はほとんど観たというのに、地方を往来しながら映画を広報したし、ファンとの一日デートにも喜んで参加した。
多くの俳優が映画の公開直前に、決められた大型映画館で2、3回の舞台挨拶をして済ませてしまうのと比べると、まるで違っていた。
イ・ジュンギのこのような姿勢からは、自分の作品についての強い愛情と責任感が感じられた。
(次回へ続く)
文=朴敏祐(パク・ミヌ)+「ロコレ」編集部
コラム提供:ロコレ
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