「コラム」第6回 いま読みたい!人気俳優物語 ヒョンビン(中編)

スターの多くが「永く愛されたい」というが、それは簡単なことではない。予測しにくい大衆に接する仕事だけに、いくら慎重に臨んでも失敗の可能性は避けられない。それに、人間の心というのは一度人気を得ると変わりやすいものだ。初心を忘れずに自分が選んだ道に励む、というのは誰にも難しいことなのである。多くのスターが生まれて、またすぐ散るのは、桜の開花と同じようなものかもしれない。つまり、自然の摂理なのだ。

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先を見る洞察力に優れている

ヒョンビンを見ていると、俳優として特別な何かを持っているような気がする。それは、単純に彼が持っているイメージによるものではない。何よりも、彼はマスコミへの露出をコントロールする賢明さを持っている。

露出が多いと、その分だけ大衆の興味も薄くなる。実際、ヒョンビンはある程度の露出はするが、トークショーやバラエティ―番組で消耗しないことによって俳優としての位置を固めている。

もちろん、どのような基準を持ってどんな作品を選ぶかは俳優の個性だ。けれど、ヒョンビンが出演したすべての作品がいつも成功しているわけではないのに、今も安定した位置を守っていられるのを見ると、彼の選択が間違っていないことがわかる。

他の俳優なら前作が失敗すると、長い間活動できなかったり忘れられてしまったりするのに、ヒョンビンはたとえ十分な結果が出なかったとしても、ファンから変わらぬ愛情を受けている。多くの監督や作家も、一緒に作品を作りたい俳優だと彼を高く評価しているのだ。

それでも、ヒョンビンは慎重だ。どんな姿を見せてくれるかという好奇心の余地を残していれば、俳優はそれだけで半分は成功したのと同じである、ということを知っている。そのため、ファンや監督、脚本家たちが今までのヒョンビンではなく、これからのヒョンビンにもっと期待する。

何よりもヒョンビンは、制作側が提案する役をそのまま選ぶよりは、どんな作品を選べば最大の効果が得られるかということを悩んだ末に自ら選択している。彼のこの選択が賢いと思えるのは、先を見る洞察力に優れたものがあるからだ。

最も大事なのは家族

ヒョンビンの周囲の人々は彼を「まっすぐ生きている人」と評価する。彼がそう思われるのは、何よりも家族を大事にしているからだ。

ヒョンビンは言う。

「私が最も大事に思うのは家族です。母から家族の大切さを学びました」

韓国では当たり前のことなのだが、ヒョンビンの家族愛は強い。

「いつからか知りませんが、自分よりも家族を先に考えるようになりました。俳優として活動している過程でも、いつも家族を思っています。もっと勉強をしようと思ったのもそうです。後に私にも子供ができて、その子が父の学歴を話すとき、少しでも誇りに思ってくれたらいいなと思いました」

真面目すぎるとも言えるほど誠実な価値観だ。ヒョンビンはこのような価値観を俳優としての行動指針に生かしている。

彼が俳優としてどれほど生き方に集中しているかを物語る逸話がある。俳優という仕事は、大衆の人気に大きく左右されるだけに、得るものも多いが諦めなければならないものも多い。

「私は、同じ年頃の人たちと一緒に楽しめないことが多いのが残念です。気軽にクラブに行ったこともないんですよ。あるとき、若者が多く集まる繁華街で撮影したことがあります。帽子やアクセサリーを売っている屋台などを見ながら、急にブラブラと歩きたくなりました。悩んだ後、車から降りて歩いてみましたが、誰も私を気にしていないのに、まるで裸で歩いているような気がしました。道を歩くにも勇気が必要だということを知りました」

人間なら誰もが周りの人に気を使うことなく自由に行動したがるものだ。しかし、ヒョンビンにはそれができない。人気スターの宿命なのである。

相手の力を生かすタイプの俳優

韓国のドラマ作家には女性が多い。実際、ヒョンビンにとって重要な意味を持っているドラマ『アイルランド』(2004年)は女性作家の作品だ。韓国ではドラマをよく見るのが女性であることを考えると、韓国のドラマが映画よりもっと女性的な感受性を強調していることがわかるだろう。ヒョンビンは女性の感受性を表現するとき、真価を発揮している。

ヒョンビンが女性の感受性によく感応していることは、彼の相手役を見るともっと明白だ。今までの彼の相手役には、演技上の問題を抱えている女優が多かった。たとえば、映画『百万長者の初恋』でのイ・ヨニにしても、ドラマ『雪の女王』のソン・ユリにしても……。もちろん、彼女たちと一緒に演技をするとき、ヒョンビンにはこれと言った問題がなかったが、いつもの魅力を存分に出したとは言いがたかった。

反対に、『アイルランド』のイ・ナヨンや『私の名前はキム・サムスン』のキム・ソナのように安定した演技力を持った女優と共演するときは、自分が持っている実力を十二分に出している。

これは、ヒョンビンが自ら発電して輝く俳優というより、相手からエネルギーをもらってそれを生かすタイプの俳優だということを示していないだろうか。

特に、女性的ともいえる繊細な感情と精巧なストーリーを表現するときこそ、ヒョンビンは自分の持ち前の実力が出せるのだ。

(後編に続く)

文=朴敏祐(パク・ミヌ)+「ロコレ」編集部

コラム提供:ロコレ
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2016.08.13