『ヒマラヤ~地上8000メートルの絆~』。映像のあまりの迫力にフィクションのように感じてしまいますが、実話だということを噛みしめながら観ると、さまざまな思いが胸の中を駆け巡ります。
韓国で大ヒットを記録
人生はよく“山”に例えられます。試練や困難を乗り越えて頂上にたどり着く、でも頂上にたどり着いたからといって、そこに何かがあるわけではなく、その山を登ることに意義があるのだ、と。
「そこに山があるから登るのだ」と言われるのと同じように、人生も「生かされているから生きる」、そして、登ったら必ず降りてくるのが登山なのだということにも深い意味を感じずにはいられません。
韓国人の多くが登山を好むのは有名な話ですね。
この映画が2015年に韓国で公開されたとき、同時期に公開された『スターウォーズフォースの覚醒』を抑えて堂々の1位を記録したのも大いに頷けます。
そして、そんな山好きな人の多い韓国で、登山を描いた映画がこれまでなかったということにも驚きました。
『ヒマラヤ~地上8000メートルの絆~』は、韓国人登山家のオム・ホンギル氏が仲間と共に、エベレスト登山中に亡くなった後輩の故パク・ムテク隊員の遺体を収拾するために、再びエベレストに挑む遠征隊の実話を描いた作品です。
この映画が教えてくれること
私たちは生きている中で、多くの仲間に出会います。学校でも職場でも、また家族も運命を共にする一つのチームといえるのかもしれません。仲間を愛し、信頼し、共に支え合いながら進んでいくことがどれほど大切なことなのか、この映画は私たちに教えてくれます。
時には、意に反する行動をする仲間がいるかもしれません。危険な登頂をするときは、自分の命を守るため、仲間を置き去りにしなければならないこともあります。それが暗黙の山の掟なのです。
他の隊員から責められている一人の隊員を、ホンギル(ファン・ジョンミン)は責めるのではなく理解します。「同じ立場なら、自分も同じことをしただろうと思う。登山家が登山家の気持ちを理解しなくてどうする」と。
また、ホンギルは劇中のラジオ番組の中で、このように述べています。
「山に登ればすごいことを発見できると思うでしょう? そんなものは絶対にみつかりません。そこで得られるのは自分自身の姿です。とてつもなくキツくて苦しい時に、自分でも知り得なかった自分の姿が見えるんです」
キャストがとても魅力的
“山を征服するのではなく、その山に留まらせてもらっている”というオム・ホンギル氏の山に対する畏敬の念が切々と伝わってくるような珠玉のセリフが、この作品にはいたるところに散りばめられています。
ここ数年、ファン・ジョンミンが主演する映画は絶対にハズレがない!というのが個人的な思いです。
『国際市場で逢いましょう』も『ベテラン』も大満足の映画でしたが、やはり、『ヒマラヤ~地上8000メートルの絆~』もその期待を裏切りませんでした。
共演者にも大注目です。
あの大ヒットドラマ『応答せよ1994』で主演したチョンウ、『応答せよ1988』でリュ・ジュニョルの母親役を演じ好評を博したラ・ミラン、そして、チャン・グンソクが主演した『美男<イケメン>ですね』でコミカルなマ室長を演じたキム・イングォンなど、真の韓流好きにはたまらない素晴らしい面々がこの映画に彩りを添えています。
劇中でジョンボク(キム・イングォン)が「複雑に考えていたら山なんて登れない」と言います。
人生を山に例えるならば、人生もそんなものなのかもしれません。
文=朋 道佳(とも みちか)
コラム提供:ロコレ
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