「コラム」ペ・ヨンジュン 過去への旅路/第16回/『四月の雪』に主演

ペ・ヨンジュン
第16回 『四月の雪』に主演

 

映画『8月のクリスマス』で評価が高いホ・ジノ監督の作品に出るか、恩人とも言えるユン・ソクホ監督の映画進出第1作目に出演するか。できることなら両方に出たかっただろうが、からだが2つないだけにそれは不可能だった。究極の選択の中で、ペ・ヨンジュンはホ・ジノ監督の作品を選んだ。

 

俳優としての可能性を模索

ホ・ジノ監督の映画に出ることになったペ・ヨンジュン。賢明な選択だったのではないか。

俳優としての可能性を模索するのであれば、演出スタイルをよく知るユン・ソクホ監督より、自分とはまったく違う感性を持つホ・ジノ監督の作品を選んだほうが得るものが大きいはずだった。

恩師の誘いに応えることはできなかったが、ユン・ソクホ監督も十分に、ペ・ヨンジュンの俳優としての決断を理解していたことだろう。

ペ・ヨンジュンは2004年11月2日、自身の公式ホームページを通して正式に発表している。

「作品がホ・ジノ監督の映画に決定しました。前からホ・ジノ監督とは、俳優として一緒に仕事をしたいと思っていました。監督が持つ、内面の感情を表現した感性的な演出と秀麗な映像美を信頼していたからです」

この言葉の中に、ペ・ヨンジュンの意欲がにじみ出ている。

ホ・ジノ監督が、自分がめざす内面的な表現をどう引き出してくれるのか。そのことにペ・ヨンジュンは大きな期待を寄せていた。

 

みなぎる意欲

2004年4月の日本訪問以来、公の場に出てこなかったペ・ヨンジュンは、その年の11月に「朝鮮日報」のインタビューを受け、「これからは積極的にいろいろなことをやってみたい」と力強く宣言した。ホ・ジノ監督と組んで新しい映画に出るにあたり、意欲がみなぎってきたのである。

そのインタビュー記事は、2004年11月19日付けの「朝鮮日報」に掲載されたが、ペ・ヨンジュンの発言の中に、日本のファンの間で微妙な議論が起こるようなものがあった。それは、記者が「冬ソナ後の日本の反応を予想しましたか? なぜ、あのように日本人から好評を博したと思いますか」と尋ねられたときの答えだった。

「まったく予想していませんでした。このドラマは、韓国でも他のアジアの国でも人気がありました。特に、日本で凄い人気を受けましたが、このドラマを支持してくれた方々を取り巻く環境が寂しくて索漠としているからでは……。昔のことを追憶したかったのではないかと思います。事実、世の中はとても寂しいものではありませんか」

このとき、日本のファンのことを「寂しくて索漠としているからでは……」と言っているが、この部分にショックを受けた人がいたことも事実だ。

しかし、ペ・ヨンジュンは決して日本のファンだけを「寂しいから」と決めつけたわけではない。それは、続いて発した言葉によっても明らかだ。
ペ・ヨンジュン

ファンとの連帯感

記者からさらに「国際的なスターになって、とてつもない愛を受けているというのに、それでも寂しいのですか」と質問されて、ペ・ヨンジュンはこう答えている。

「たくさんの愛を受けていますが……(沈黙)。正直言って寂しいですね。あまりにたくさんのものを背負わなければならない気がします。その寂しさを楽しんだり消し去ってしまったりしたいけれど、なかなか難しいようです」

寂しさを隠さないペ・ヨンジュンは、日本のファンとの間に連帯感を強く持っていたのではないだろうか。日本のファンの中に自分と同じ心情を見つけ、そうした共通点によって心の絆を築こうとしたのでは……。ペ・ヨンジュンの発言からは、そういう気持ちがくみ取れる。

この時期、ペ・ヨンジュンは迫りくる重圧と必死に闘っていた。その中で、ホ・ジノ監督との映画作りに踏み出そうとしていた。

「積極的に活動したい」と宣言したペ・ヨンジュンは、写真展や映画のイベントに出席し、2004年11月下旬には2度目の公式来日を果たした。そのとき、ファンの転倒事故というアクシデントもあったが、誠実な謝罪会見を開いて深謝している。

2005年になると、『四月の雪』(韓国でのタイトルは『外出』)の制作に没頭し、厳寒の中で深夜まで及ぶ過酷な撮影日程をこなしていった。

 

頭を下げて感謝の挨拶

交通事故で重体に陥った妻を看病する中で知った不倫という事実……。愛の裏切りを突きつけられた主人公インスは、同じような境遇にさらされた人妻のソヨンと危険な愛に入っていく。

物語は説明的な描写を極力省略して、主人公たちの内面の変化を感性的に表す手法によって進行していった。ペ・ヨンジュンにとっても、今までの俳優人生で経験したことがない困難に苦しめられた。

1つは、撮影現場でシナリオを簡単に変えてしまうホ・ジノ監督の演出である。事前からある程度は覚悟していたものの、実際に目の当たりにしたホ・ジノ監督のスタイルは、想像以上のものだった。

準備段階で完璧にセリフを覚えてから撮影に臨んでも、それが急に変更されては、俳優もたまったものではない。ペ・ヨンジュンも戸惑いが大きかっただろうが、それでも彼はホ・ジノ監督のスタイルを尊重し、最後まで協調的な気持ちを失わなかった。それが、自分の演技にきっとプラスになると信じたからである。

もう1つの困難さは、共演のソン・イェジンが役柄と比べて若すぎた点だ。ソン・イェジンは実年齢より10歳近くも上の女性を演じなければならず、そのギャップを埋めるのは容易ではなかった。

当然ながら、相手役のペ・ヨンジュンにも影響が出てくる。しかし、彼は自分が演技上で悩んでいるにもかかわらず、常にソン・イェジンに優しい目を注ぎ、俳優の先輩として若い後輩を支え続けた。

いろいろな面で苦労が多かった。そんなペ・ヨンジュンを温かく励ましたのが、撮影現場を訪れた多くのファンたちである。

ペ・ヨンジュンも感謝の言葉を捧げる。

「撮影現場で演技の答えを見つけられず、もどかしい気持ちのときがありました。そんなときでも、外で待っていた多くのファンが一斉に拍手をしてくれました。その瞬間、泣きたくなりましたが、頭を下げて感謝の挨拶をしました」

厳寒の中で、ずっと撮影が終わるのを待ち続けていたファンの人たち。その気持ちを考えると、ペ・ヨンジュンは新たな勇気が沸いてくるのだった。

(次回に続く)

 

文=康 熙奉(カン ヒボン)
コラム提供:ロコレ
http://syukakusha.com/

2016.06.02