「コラム」ペ・ヨンジュン 過去への旅路(第14回)

第14回 映画『スキャンダル』に主演

『冬のソナタ』以後に、ペ・ヨンジュンとチェ・ジウの熱愛説が新聞を賑わせていた。その2人がフッション・ショーの出演を終えて同じ飛行機でオーストラリアから帰国したのは、2002年4月25日だった。

超人気ドラマの主演2人が実生活でも恋人同士になったらビッグニュースである。空港には大勢の報道陣が詰めかけた。

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「ジウは妹」

ペ・ヨンジュンは質問攻めに遇ったが、「ジウは妹のような存在。兄と妹のように親しくしているだけなのですが……」と答えた。

別の機会にチェ・ジウも「もう子供ではないのに、こういう話が出てきて負担を感じますね。でも、ヨンジュン兄さんを避ける理由はありません」と語った。

以後も連日のようにスポーツ新聞はペ・ヨンジュンとチェ・ジウの熱愛説を記事にしていたが、2人が特別な動きを見せなくなると、次第に沈静化した。

報道のあまりの過熱ぶりに驚いたのは、とりわけ当人たちであったことだろう。2人がお互いに好意を持っていたのは事実に近いと思われるが、あまりの騒動によって、恋愛に発展する機運がそがれてしまったのかもしれない。

爆発的な人気を得たトップ俳優同士だけに、一般のカップルのようには恋愛もままならない。お互いに、天職ともいえる俳優業に専念する決意を再確認したとき、熱愛説もはかなく消滅していったのである。

カメラテストを実施

時間をかけて映画初主演作を模索していたペ・ヨンジュン。彼の元にはCM契約の話が次々と持ち込まれた。

クレジットカード、携帯電話、証券会社、衣料ブランド、建設会社……。いつのまにか、ペ・ヨンジュンは10ほどの企業のCMモデルに起用されていた。契約料も破格で、出演作がないままに彼はイメージを売ることで「CM長者」となっていた。

それだけに、余計に本業にこだわりたかった。俳優として納得する映画に主演することが、ペ・ヨンジュンにとっての矜持だった。

その熱意に周囲も折れ、退廃的な両班(ヤンバン)の役への挑戦を支援してくれることになった。

イ・ジェヨン監督からも「一度カメラテストをしてみよう」と声がかかった。

ペ・ヨンジュンは、眼鏡をはずし、髭を付け、韓服を着た。さらに、髷を結ったカツラをかぶるつもりだった。けれど、イ・ジェヨン監督がカツラを許さなかった。自分の髪で髷を結わないと真実味に欠ける、というわけである。

ペ・ヨンジュンもその件は納得したのだが、実際に髷を結うとなると、想像以上の痛みに苦しめられた。

「息が止まるほど痛かった。こんなことをいつもしなければいけないなんて……」

弱音を吐かないペ・ヨンジュンが嘆くほどだから、本当につらかったのだろう。それほど苦労して両班に扮してみると……。

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気持ちは焦るばかり

やはり、実際に成りきってみないとわからないものだ。ほとんどの人が「ペ・ヨンジュンが両班に扮しても似合うわけがない」と思っていたのに、カメラテストの評判は上々だった。

気を良くしたペ・ヨンジュンだったが、それでも頭の痛みには苦しめられるばかりだった。撮影中にいつもこんな思いをしなければいけないのか、と思うと気が重かったが、鏡を見ては自分を奮い立たせた。

カメラテストの成功によって、イ・ジェヨン監督はペ・ヨンジュンの主演を決断した。かくして、2002年の秋から、ペ・ヨンジュンは映画初主演の『スキャンダル』の撮影準備に入った。

現代的な青年をずっと演じてきたペ・ヨンジュン。一転して、時空を越えて数百年前の風流人に扮しなければならない。

撮影に入る前に、やるべきことは数多くあった。

まずは減量。朝鮮王朝時代のエリート層が筋肉質な体型をしていたのでは、サマにならない。ペ・ヨンジュンはトレーニングをやめ、食事の量も減らした。

そのうえで、韓服を着こなして古い時代の所作を身につけるための訓練を始めた。歩き方一つとっても、両班は威厳を保ちながらゆったりと歩かなければならない。さらに、詩作、絵画、武芸に精通していなければならない。覚えることが非常に多かったが、時間が足りずに気持ちは焦るばかりだった。

中でも、一番苦心したのは言葉だった。朝鮮王朝時代の両班の言葉は、まるで外国語のようにも思えた。

興行的にも成功

撮影が始まってみると、言葉の問題で悩むことが多かった。

どんなにセリフを完全に覚えてカメラの前に立っても、自分では思いどおりに演技できたという実感がないのである。

周囲の反応はどうなのか……。

気になってイ・ジェヨン監督のほうを見ると、彼はプロデューサーとモニターを見ながら深刻な表情で話し合っていることが多かった。

一体、なんの話をしているのか。気になるペ・ヨンジュンは、つい2人の間に割って入ってしまう。

「私にも聞こえるように話してくださいよ」

ペ・ヨンジュンは必死に懇願した。あまりに切羽詰まった様子だったので、スタッフたちはかえって冗談だと思って笑い合った。

しかし、冗談でもなんでもなかった。ペ・ヨンジュンは自分の演技に自信が持てず、監督やプロデューサーからのアドバイスを待っていた。そんな状態だったから、周囲のヒソヒソ話が気になって仕方がなかったのだ。

テレビドラマで頂点を究めた俳優も、映画の世界ではまるで新人のように謙虚だった。結果からいえば、それまでの実績を捨てて一から演技に取り組もうという姿勢が功を奏した。映画『スキャンダル』は2003年の秋に韓国で公開されたが、ペ・ヨンジュンの演技が高い評価を受けた。何よりも、「優雅なふるまいが両班の特徴をよく捉えていた」と評されたことがうれしかった。

また、興行的に黒字になったことが大きかった。

それ以前に「時代劇映画は当たらない」と言われてきたのに、そのジンクスを『スキャンダル』は覆した。新しい役に果敢に挑んだペ・ヨンジュンの意欲は、興行的な成功という形でも実を結んだ。

(次回に続く)

文=康 熙奉(カン ヒボン)

コラム提供:ロコレ
http://syukakusha.com/

2016.05.28

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