韓国ドラマには、同じような俳優が掛け持ちで他のドラマに出る重複出演がとても多い。前編では、重複出演がなぜ多くなるのかという歴史的な背景について触れた。今回の後編では、この重複出演問題を解決するためには何が必要かをリポートしていこう。
同じ雰囲気になってしまう
何年も前のことだが、韓国で健全なメディア環境づくりを目指す市民団体が重複出演に関する調査をしたことがあった。
視聴者モニターを通じて1カ月間にわたり、3大地上波放送局であるKBS、MBC、SBSのすべてのドラマを調査した。
その結果、2つ以上のドラマに同時出演している俳優が27名、3つ以上のドラマに同時出演している俳優も9名にのぼった。そしてこの調査結果でも、重複出演している俳優の多くは、ベテラン俳優たちだった。
こうした重複出演自体がドラマの質を下げるものだと市民団体は指摘しているが、最大の問題は重複出演する俳優の外見や服装、そして演技の方法までが似通ってしまっていることだ。
たとえば、調査期間中に重複出演が最も多かったあるベテラン女優の場合、妊娠を切望するタクシー運転手、どこにでもいる素朴なおばさん、仕事最優先のキャリアウーマン、権力と富を追求する病院の副院長夫人というように、演じる役柄が大きく異なった。
しかし、彼女はすべての役柄で、いつも無愛想に振舞うという演技を披露し続けた。唯一目立った違いと言えば、純粋な庶民と意地悪な貴婦人をうまく演じ分けていた点だという。
重複出演していた他のベテラン俳優たちも、年齢層が近いためか、みな同じような雰囲気をかもし出していたと市民団体は指摘している。
根が深い問題
こうした重複出演の問題は、ドラマの質を下げるだけでなく、視聴者への礼儀を欠くものであり、韓国ドラマ全体に対して食傷気味な雰囲気を蔓延させる結果を招いている。
実際、視聴者からは重複出演に対して厳しい意見が寄せられた。
「出演している俳優があまりに重なるので、ドラマがすべて同じように見えてくる」
「演技の力量には限界があるはずなのに、同じ俳優が複数のドラマにまったく違う役柄で出演しているので、視聴者としては混乱してしまう」
また、ドラマ制作の現場からも不満の声がもれている。
あるドラマ制作会社の関係者は、「ベテラン俳優たちは他のドラマにも同時出演していることが多いので、彼らの撮影スケジュールを確保するのがとても大変です。だからと言って、ドラマ業界の先輩でもあり年上でもある彼らに、こちらはなかなか強く言えないのが実情です」と本音を語っている。
これほどまでに重複出演の問題が指摘されているにもかかわらず、ベテラン俳優の演技力に対して問題視する声はほとんどない。それだけ、彼らが卓越した実力を備えているということなのだろう。
裏を返せば、そうした演技力の高いベテラン俳優だけに、出演オファーが殺到してしまっている。
重複出演は実に根が深い問題だと言わざるをえない。
真剣に考える時期
どうすれば重複出演の問題は解決されるのか。
まずは極めて大きい出演料の格差を改善すべきだろう。ある程度、出演料が平準化されれば、俳優たちも無理して複数のドラマに出演しようとはしなくなるはずだ。
しかし、一番重要なのは、人気俳優や人気脚本家を輩出することばかりに目を向けずに、助演俳優や脇役俳優たちの育成にもっと力を注ぎ、俳優全体としての層を厚くすることが肝心だ。
このように、ドラマ界全体で取り組まなければならない構造的な課題があるのは事実だろう。
しかし、この問題は突き詰めれば、俳優や制作者一人ひとりの姿勢の問題だと言うこともできる。
俳優たちが重複出演を断ることで、また制作サイドが限られた俳優にばかり出演オファーをすることをやめることで、すぐにでも解決できる問題のはずだ。
韓国の視聴者が、俳優たちの重複出演に辟易しているのは明らかな事実。それにもかかわらず、自助努力を怠ったまま重複出演が続いていけば、いつか韓国の視聴者に見放されてしまうに違いない。
手遅れになってあわてることがないように、業界が一致団結して重複出演問題を真剣に考えるべきだろう。
文=「ロコレ」編集部
コラム提供:ロコレ
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