「コラム」『太陽の末裔』の演技に生きたソン・ジュンギの軍隊生活

345『太陽の末裔』に主演したソン・ジュンギ(写真/韓国KBS『太陽の末裔』公式サイトより)

 

かつて韓国では「兵役は芸能人にとっての墓場」と言われていた。兵役で芸能界を留守にしている間に人気が落ちてしまう、という意味で、それを恐れて兵役忌避の問題を起こす芸能人も少なくなかった。しかし、その言葉が最近は聞かれなくなってきた。

 

最前線で軍務に励む

ヒョンビンは、訓練が厳しい海兵隊の軍務をやりとげて芸能界に復帰して称賛された。その後では、なんといってもソン・ジュンギが「芸能人にとって兵役が墓場でないこと」を立派に証明してみせた。

彼は大人気となった『太陽の末裔』でエリート軍人のユ・シジンに扮したが、この役を演じるにあたって自身の軍隊生活が大いに役立ったことだろう。

そのソン・ジュンギが兵役のために入隊したのは2013年8月27日だった。

彼は1985年9月19日生まれなので、入隊時は28歳になる直前だった。韓国の男子は20歳前後で入隊する例がほとんどなので、新兵の同期生の中では最年長だったに違いない。

配属された部隊があるのは江原道(カンウォンド)の高城(コソン)。韓国でも東海岸側の最北部で、軍事境界線の南側である。つまり、北朝鮮と激しく対峙する最前線なのだ。軍務はかなり厳しかったことだろう。

ソン・ジュンギが軍務中だった2014年6月には部隊で数人が死亡する銃乱射事件が起きている。

このときは彼の安否が相当に心配されたものだった。

 

677『太陽の末裔』のポスター(写真/韓国KBS『太陽の末裔』公式サイトより)

 

プロ野球の試合が息抜きになった

兵役の軍務を終えて、ソン・ジュンギは2015年5月26日に除隊した。その日は、高城までファンが出迎えていたが、彼は取材陣のインタビューに答えて、次のように語っていた。

「韓国の男性なら誰でもする軍隊生活なので、特別なことはありませんでした。言ってみれば、遅い年齢で入隊したということだけですから……。ただ、今は久しぶりにカメラを見たので戸惑っています。みなさん、こんな遠くまで来てくださって、本当にありがとうございます」

報道陣から「つらいことはなかったですか?」と尋ねられたソン・ジュンギは、こう答えていた。

「つらいことは特になかったですね。空気もいいし、朝起きて運動もするので健康によかったですよ」

「むしろ私は最前線で生活をして、俳優というより人生において良い経験になったと思います。1年9か月間、とても貴重な経験をしました」

さらに、ソン・ジュンギは「入隊する前と後で何が変わったか」と尋ねられて、「20代から30代になったというのが一番大きな変化です」と笑いながら言ったあとで、こう付け加えた。

「体力がつきましたね。相対的に年下の友人たちと生活しましたが、負けたくなかったですからね。なぐさめになったのは、野球ですね。野球の試合を一つも残さず見ていました。特に、ハンファ・イーグルスが大きな力になったようです」

そう言って好きなプロ野球チームの名前をあげた。彼にとって、休憩時間にプロ野球の試合を見ることが本当に息抜きになったことだろう。

 

567兵役中の軍務の経験が『太陽の末裔』の演技に生きていた(写真/韓国KBS『太陽の末裔』公式サイトより)

 

軍人の役では軍務経験の有無が大きい

除隊のとき、彼は涙を浮かべながら、ファンにこうメッセージを伝えた。

「ファンの方々に話をしようとすると涙が出てきます。このように誰もがする軍隊生活ですが、職業が芸能人なので違うようにも見えてしまいます。確かに、いろいろと心配が多かったのですが、ファンの方々が送ってくださった手紙や小包の一つひとつが、本当に大きな力になりました。心から感謝しています」

除隊の時点で、ソン・ジュンギは復帰作が決まっていた。それが『太陽の末裔』だった。兵役の軍務を終えた直後に、彼は役のうえで再び軍人に戻ったのである。

その復帰作について彼はこう述べた。

「記事が出てみなさんもご存じでしょうが、ドラマで挨拶できることになりました。個人的にも期待が持てる作品で、いいドラマになりそうです。ドラマで立派な姿をお見せいたします。応援してくださったすべての方々に心から感謝申し上げます」

除隊時のこの言葉に偽りはなかった。ソン・ジュンギは『太陽の末裔』の中で本当に立派な姿を見せて、この作品を大ヒットに結び付けた。

「ユ・シジンを演じるにあたって、軍務の経験が本当に役に立った」

ソン・ジュンギは後にそう語ったが、この言葉には説得力があった。

なにしろ、軍人の役を演じるにあたり、軍務経験の有無は非常に大きい。『太陽の末裔』の第1話の冒頭でソン・ジュンギはエリート軍人としての屈強な姿を見せるが、彼自身が兵役を終えたばかりなので、立ち居振る舞いにもリアリティがあった。

その姿がドラマをキリリと引き締めていたことは間違いない。

 

(文=康 熙奉〔カン ヒボン〕)

コラム提供:ロコレ
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2016.04.18