台本読みで笑顔を見せる主役のチャン・グンソク(写真/韓国SBS『テバク』公式サイトより)
チャン・グンソクが主演する『テバク』。韓国SBSで3月28日から放送されるが、ヨ・ジング、イム・ジヨン、チェ・ミンス、チョン・グァンリョルといった豪華共演陣とチャン・グンソクがどのような演技でからんで話を盛り上げるのか。放送前から話題が沸騰している。
劇中で描かれるのは、朝鮮王朝19代王・粛宗(スクチョン)から21代王・英祖(ヨンジョ)までの時代。チャン・グンソクが扮するのは、王子として生まれながらも捨てられてしまったテギル。結局は最下層の身分のイカサマ師になるのだが、弟でもある国王・英祖に対して国家を賭けた一世一代の大勝負を仕掛ける。
ストーリーは実にスケールが大きい。そんな設定の中で、チャン・グンソクが持つ奔放な演技力がドラマをきっと面白くしてくれるはずだ。
物語の展開を予想していて気になるのは、テギルが王子でありながら捨てられてしまった経緯だ。それは、父親の粛宗が「自分の息子ではないのでは?」と疑念を抱いたからだという。
その背景を語るうえで欠かせないのは、テギルも英祖も粛宗の側室だった淑嬪崔氏(スクピンチェシ)の息子であったということだ。
淑嬪崔氏といえば、時代劇『トンイ』の主人公になった女性だ。劇中では“トンイ”と名付けられていたが、それは制作したイ・ビョンフン監督が創作した名前であり、歴史的には淑嬪崔氏として知られる。
史実を見ると、彼女は1693年の秋に粛宗の王子を産んでいる。それが永寿君(ヨンスグン)なのだが、名前の意味に反してわずか2カ月で早世してしまった。
テギルを捨てる決断をした粛宗を演じるのは名優のチェ・ミンスだ(写真/韓国SBS『テバク』公式サイトより)
その翌年、再び淑嬪崔氏は粛宗の王子を出産した。それが後の英祖であり、淑嬪崔氏は王の実母という栄誉を受けることになった。
チャン・グンソクが扮するテギルは架空の人物だが、物語のうえでは、永寿君の生まれ変わりのような扱いになっている。つまり、永寿君はわずか2カ月で世を去ったのではなく、粛宗の命令によって捨てられたのだ、という設定なのだ。
ここで重要なのは、粛宗が自分の息子と確信できなかったから捨てたということだ。淑嬪崔氏は粛宗の側室だったが、朝鮮王朝時代に側室が王以外の男性の子供を産むということはまったく考えられない。
それなのに、なぜ粛宗は疑念を抱いたのか。
実は、淑嬪崔氏は時代劇『トンイ』で思慮深く誠実な善人として描かれていたが、『朝鮮王朝実録』(朝鮮王朝の正式な歴史書)を丹念に読むと、イメージと違う実像が浮かび上がってくる。
実際、淑嬪崔氏の言動が様々な政変を引き起こしている。そういう意味では、朝鮮王朝の裏舞台で暗躍した女性、と思われても仕方がない。
さらに、彼女には金春沢(キム・チュンテク)という愛人がいた、という噂も当時の宮中を賑わせていた。『テバク』でこの噂がどのように扱われるかは現段階で不明だが、テギルが王子でありながら捨てられるという設定になる以上は、淑嬪崔氏の暗躍の部分も大きく描かれるに違いない。
何よりも、史実と違う善人物語が好きなイ・ビョンフン監督が制作した『トンイ』のイメージを持ったまま『テバク』を見ると、視聴者も淑嬪崔氏の描かれ方の違いに戸惑うことだろう。
同時代の女性なら張禧嬪(チャン・ヒビン)が典型的な悪女として有名だが、史実を知ると、淑嬪崔氏は張禧嬪を上回る悪女であった可能性が高い。果たして、『テバク』のナム・グォン監督は淑嬪崔氏の本性をどう暴いていくのか。それもストーリーの重要な部分になるだろう。
(文=康 熙奉)
コラム提供:愛してる韓国ドラマ・Kポップ
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