「鼎談インタビュー」キム・コッピ、石倉三郎、犬童一利監督映画「つむぐもの」の魅力を語る!

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テレビ、映画、舞台で活躍する俳優・石倉三郎が芸歴50年を迎え、初主演を務めた映画「つむぐもの」が3月19日(土) より有楽町スバル座ほか全国順次ロードショー。

 

「動画」3月19日公開『つむぐもの』予告編 

倒れても人の手はかりたくない頑固な和紙職人、剛生を演じる石倉三郎と、韓国からやってきた落ちこぼれ女子、ヨナ役で共演するのは2002年映画「嫉妬は私の力」でスクリーンデビューを飾り、2008年、映画「息もできない」で不遇な家庭環境に置かれ傷つきながらも、強く勝ち抜こうとする女子高生ヨンヒを好演し、日本映画にも出演している注目の女優キム・コッピ。
本作でメガホンをとるのはゲイの青年の葛藤を描いた映画「カミングアウト」など話題作を手がける犬童一利監督。
1月27日に行われた、完成披露試写会後、タイトなスケジュールの中、インタビューに3人そろって、応じてくれた。

インタビュールームに姿を見せたキム・コッピ、石倉三郎、犬童一利監督の3人からは同作品を通じて結ばれた絆を深く感じられた。
和やかな雰囲気の中、「よろしくお願いします」とのあいさつからインタビューがスタート。

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Q.完成披露試写会を終えた今のお気持ちはいかがですか?

キム・コッピ:今日は観客のみなさんと映画を観ることはできませんでしたので、みなさんの反応が気になっていましたが、作品を観終わったみなさんが「よかったですよ」と口々に言って下さったので、「よかったな。うまくいったんだな」と感じました。
石倉三郎:もう、最高ですね。本日は晴天なりですね。やりきった感がありますね。監督が喜んでくれているので、(謙遜して)私のつたない演技でも間に合ったのかな?ということです(笑)。
犬童監督:僕も同じ気持ちです、やっと、みなさんといっしょに観て頂けるスタートラインに立ったなという気持ちです。みなさんから、おおむね好評を得たので安心するとともにこれからもうひと踏ん張りだなと思っています。

Q.犬童監督、本作では伝統文化の後継者問題、介護問題、さらに国際交流と3つのテーマが一緒に描かれていますが、あえて、3つのテーマをひとつにした理由は?

犬童監督:もともと、福井県丹南地域と、韓国・扶余(プヨ)群が友好関係にあり、プロデューサー陣から映画製作のお話を頂いて越前と扶余を舞台に映画を作ることになりました。丁度1年前の正月に実家に帰った時にミヒャエル・ハネケ監督の「愛、アムール」を観まして、両親が寝ている中でその作品を観て、今まで、介護というものにまったく向き合ったことがなかったのですが、とても身近に感じられました。そこで、介護をテーマにしたいと提案したところ、プロデューサー陣もそれぞれ“介護”をテーマにしようと思っていたようで、企画が早く進みました。日韓と越前の職人の話にしたかったので大変でしたけど、伝統文化の後継、そして介護をテーマにしました。

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Q.犬童監督、キャスティングで頑固一徹な和紙職人の剛生役に石倉さんを起用した一番の理由は何ですか?
犬童監督:和紙を漉く背中です。剛生は言葉が少ないんですよね。人生経験もあって、口数が少なく、佇まいというか、和紙を漉いている姿でその人の生き様やどういう人間か表現できる役者を探していて。圧倒的なキャリアと職人気質の雰囲気やイメージを持つ石倉さんにお願いしました。

Q.役者人生50周年を迎え、名脇役として知られる石倉さんですが、本作が初主演となります。主役を演じていかがでしたか?
石倉三郎:職人役と聞いて、「簡単じゃないか」と思いましたね。職人という役どころは割かし、多かったもので。ただ、きちんと職人色を描くということは初めてだったので、「これはやりがいがあるな」と思いましたね。
監督が私にこだわってくれたということが一番うれしくて、いい作品に参加できました。

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Q.試写を拝見し、本作で石倉三郎さんの俳優としての新たな魅力を感じたと思いましたが。
石倉三郎:ありがとうございます。それは犬童一利の力でしょうね。演技上でセッションした時にけっこうダメだしされまして。(キム・コッピに)こういうすごい子がいますしね。監督に全部ゆだねようと思いましたね。とにかく、コッピちゃんの相手役としての力量がすごかったですからね。

Q.キム・コッピさんは石倉三郎さんと共演していかがでしたか?
キム・コッピ:私も共演できて本当に楽しかったです。お互い息がぴったり合いましたのですごく居心地がよく、楽しく演じられました。

Q.劇中ではヨナの表情の変化が見事に描かれていて、最初の無気力なヨナの表情と最後のヨナの表情が別人のように変化していましたが。

犬童監督:実はあえて、最後のシーンは最初のシーンと同じシーンで構成し、ヨナの変化を描きました。
最初の漫画を読むシーンはNARUTO 1巻で最後のシーンは31巻です(笑)。

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Q.コッピさんはヨナ役を演じる上で、苦労した点はありますか?
キム・コッピ:苦労とまではいかないですが、私もヨナの微妙な変化を考えながら演技していました。つまり一見してみると変化していないように見えるんですが密かに、内面的には変化があって、少しの変化を見せる最後のシーンが私も好きなんですね。
最初ヨナは何かに対し、喜ぶということもなく、いつも不機嫌で怒っていて、人生の楽しみもないような人だったと思うのですが、剛生と出会うことによって、一緒に過ごしていくうちに自分でも知らないうちに彼女の中に変化が表れたと思います。以前に比べると明るくなっていますよね。そんな小さな変化に重点を置きながら演じていました。

Q.石倉さんは越前和紙職人役でしたが、体力的にも大変ではなかったですか?
石倉三郎:大変ではなかったですが、難しい。非常に難しい世界ですね。何年も、何年もかかって、一枚漉けるというくらい手すき和紙というのはすさまじい世界ですね。

Q.脳腫瘍で倒れ、介護が必要となった剛生を演じる上で特に大変だった点はありますか?
石倉三郎:それほど大変ではなかったですね。自分の中で芝居を考えたときに、途中で監督の意向がわかって、コッピちゃんとの3人の流れの中で演じたので、大変だったことは実はないんですね。すんなり演技できましたね。

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Q.普段姿勢の良い石倉さんが剛生を演じた時の背中の演技がとても自然でしたが、犬童監督は細かく演技指導をされたんですか?
犬童監督:福井のパートは2週間の撮影で、その中で1年ちょっとのシーンを撮らなくてはいけなくて。石倉さん、コッピさんのお二人にはものすごく苦労かけました。2週間ですと順撮りは出来なくて、季節を1日の中で何度も撮らないといけなくて…。
石倉三郎:1日のうちに、春のシーンを撮った後に、次は夏のシーン、次は冬のシーンとね。

Q.作品を拝見すると撮影期間が2週間だとは思えませんでしたが。
犬童監督:各スタッフの努力で、春のシーンは桜を仕込んだり、秋のシーンの落ち葉であったり、色も全部、冬は青くしてとか、頑張ってくれました。
石倉三郎:でも、セミにはまいったね。
犬童監督:セミの音には苦労しました。違和感がないようにセミの音を消しました。
特にヨナの役は、日本語レベルと剛生との距離感が、シーンごとにだんだん変わって行くんですが、それを1日の中でめちゃくちゃな順番で撮影するので、ほとんど出ずっぱりのコッピさんは大変でしたね。

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石倉三郎:コッピちゃん、大変だったろう。
キム・コッピ:ええ。
犬童監督:石倉さんも病状がシーンによって違い、気持ちも違うのですが、同じ病院で同じ日に撮影しているで大変だったと思います。
石倉三郎:メイクの仕方で(どのシーンの撮影か)判断する感じで、鏡で顔を見てからの演技ですね(笑)

Q.先ほど、コッピさんが「石倉さんととても息が合った」と言っていましたが具体的にどんな感じですか?
キム・コッピ:これはなかなか、言葉で説明するのが難しいんですね。でも演技をしながら、俳優同士で分かり合えるものがあるんですよね。演技をしていても、相手によっては、「本当にいま、この瞬間をいっしょに生きているんだな」と思える時もあれば、「別の世界にいる」と感じることがあります。石倉さんとは本当に、「この瞬間、この世界を一緒に呼吸しながら生きているな」と感じました。

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Q.撮影中、お二人のエピソードはありますか?
石倉三郎:現場で内緒で2人でビール飲みましたけどね(笑)。
犬童監督:ちょっとした休憩の時に石倉さん、子供みたいな顔をして「監督、シーンの間があるから一杯だけいいか?」って聞くので。すっごく飲みたそうな顔をして(笑)。

Q.昼間からですか?
キム・コッピ:(日本語で)昼じゃないですね。
犬童監督:夕方ですね。「顔の色も変わらないから、俺らは」って(笑)。
石倉三郎:黄昏時は罪な時間ですね。

Q.まさにあのヨナと剛生のお酒のシーンみたいですね。
犬童監督:お二人は人間的にすごく合うといいますか、役者というより人として、すごく真っ直ぐな方なので、待っている間の時間とかそのロケーションが剛生とヨナにすごくシンクロしていました。

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Q.石倉さんはコッピさんとの相性の良さみたいなものは感じていますか?
石倉三郎:最初に監督と3人で読み合わせをやったんですが、その時に「ああ、この子はいいなぁ」と感じましたよ。相手役に惚れると演技しやすいんですよ。スーっと役の世界に溶け込めるというか…。
キム・コッピ:お互い、その役になりきれるように助け合える俳優さんがいるような気がするんですよね。相手役がこの人だからこの役に没頭できるという俳優さんがいると思いますが、そういった点でも(石倉さんとは)息が合いましたね。

Q.特に息の合ったシーンはありますか?
石倉三郎:ファーストカットからそうでしたし、酒を酌み交わすシーンの頃は、私は芝居からちょっと離れていましたね。ヨナというよりコッピちゃんと飲んでいるようでした。
犬童監督:日本酒とマッコリで乾杯したあのシーンはすごく、いいですよね。5分長回しで、3回しているんですが、夜遅い撮影で、大変だったと思いますがいいシーンが撮れたと思います。
石倉三郎:あのシーンは私も好きなシーンだね。

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Q.最初に台本を見た時はどう感じましたか?
石倉三郎:いや~、大変だなと感じましたね。

Q.介護される側ですがいかがですか?
石倉三郎:どうしようかと真剣に考えていますよ。介護っていうのは大変ですよ。介護福祉士の給料も安すぎますよ。介護職員は30万人足りないんだそうですよ。
犬童監督:重たくなりがちなテーマですが、そこはヨナの天真爛漫さが。基本的には日本でも欲しいなって、思いますね。
石倉三郎:コッピちゃんの笑顔に救われますね。
犬童監督:絶対向き合わないといけない事なので、介護という業界にまったく関心のない人にも、観てほしいですね。

Q.キム・コッピさんはヨナ役を演じて、いかがでしたか?
キム・コッピ:ヨナは専門的に介護の勉強をしたわけではないですよね。そして、ヨナの性格上、たぶん、(介護は)やりたくないと思っていたと思います。ヨナとしてはそういう状況になったら、自分の思い通りにやると考えていたと思います。ですが、身動きがとれないお年寄りと接することによって、どんな風に接したらいいかなと考えるきっかけになりました。

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Q.キム・コッピさんご自身は映画で描かれている介護についてどう思われますか?
キム・コッピ:私は、介護される側のお年寄りがヨナの事をいいなと思うくだりがあり、何故かな?と考えたんですが、私は分かる気がしたんですね。私が逆の立場だったら、あまりにも過度に親切にされると「本心じゃ、ないんじゃないかな」と感じてしまうんじゃないかなと思うんですね。でも、ヨナの場合はまっさらな気持ちで、自分の正直な感情のまま向き合ってくれるので、介護を受ける人も「あっ、この人は自分の事を感情のある人間として接してくれるんだ」と思ってくれると思います。そういうところで、ヨナの事をみなさん、気に入ってくれたんじゃないかなと思います。

Q.この映画に出演後、介護に対し、変化したことはありますか?
石倉三郎:この映画に出演するずっと以前に介護について考えていました。介護福祉士の方たちの苦労、給料の安さ、置かれている劣悪な状況をこれは国がなんとかしないといけない問題なんですよね。専門職だから、きちんとした位置に於くべきだと思っています。3Kだけど、収入はいいんだよという点から始めないと介護をする人がいませんよ。そういった点でこの作品は福祉関係の方にも観て頂きたいですが、普通の方にもぜひ、観て頂きたいですね。

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キム・コッピ:韓国では介護が必要な方、親などを介護施設に送るということを避ける傾向にあるんですね。何故かと言うと、そういう施設に親を入れると親不孝だと思われてしまう、親を捨てたという認識があるからなんですね。もちろん、そういった認識も変わって来てはいるんですが、まだそういうところがあります。私はそういった施設は必ず必要だと思いますし、積極的に利用して欲しいと思います。その為には国のレベルでしっかり、福祉体制を整えて、国が支援すべきだと思います。誰でも老いや、病気の問題は抱えることになると思いますし、一方では寿命が長くなっている訳ですよね。
誰一人避けられない問題だと思いますので、そういった施設はなおさら必要ですし、国がそういったところに手を指し述べるべきだと思います。そうすれば、介護だとか、福祉に対してもどんどん、研究もされるでしょうし、発展していくと思うので、これからより良い方向性を探せると思います。そして、そういう状況が整うことによって、人が人間として、悲惨な状況でなく、最後まで幸せに生きられるようになって欲しいと思います。

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Q.監督はじめ若いスタッフも多い撮影現場でしたが、どんな感じでしたか?
キム・コッピ:.若い方が多いという雰囲気のせいか、とっても楽しい現場でした。日本は相対的に厳格な雰囲気があると思っていたんですが、今回の現場は本当に自由な感じで、演出のスタイルは俳優の感情を大事にしてくれて、いっしょにコミニュケーションをとりながら演出をして下さったので、いい雰囲気でした。

Q.コッピさんはどのシーンがお好きですか?
キム・コッピ:私も好きなシーンがいくつもありますが、先ほど石倉さんがいったお酒を飲むシーンも良かったですね。

Q.最後にこの作品をご覧になる方へのメッセージをお願いします。
犬童監督:みんなで本当に丁寧に作った映画でして、映画は観てもらって完成だと思うので多くの方に観てほしいですね。
そして、劇中に出てくる“指キッス”を流行らせたいですね。「つむぐもの」のムーブメントを起こしたくて、僕と脚本家たちが韓国に行った時、「フリー指キッス」のプラカードを持ってトライしたので、そういった意味でも流行らせたいですね。
韓国のあいさつだと思っている方も多いですが、実は僕が考えたオリジナルなんです(笑)。
観る人の立場で感じ方は違うと思いますが、この作品のテーマである“人と人”という本質的なメッセージは人が本来持っているものだと思うので、ぜひ多くの人に見て頂きたいですね。

 

インタビューを通し、介護問題についても率直に語ってくれたキム・コッピと石倉三郎。
映画は観てもらって完成と語った犬童監督。
深い信頼関係で結ばれている3人へのインタビューは映画同様、テーマである“人と人”、の温かさに触れたものとなった。

「越前和紙をよく見てみると繊維の1本1本が折重なり、絡み合い同じものが1つとしてない1枚の美しい和紙(面)を形成している。繊維の1本1本が人の様に思え、人と人が助け合い同じものが一つとしてない強固な人生を感じる」とあるようにテーマである人と人を和紙になぞり、介護問題、後継者問題、そして日韓問題と3つをテーマに映画というエンターテイメントを通して描いている本作への期待が益々高まる。

 

映画「つむぐもの」
あらすじ:福井県、越前。和紙職人の剛生(石倉三郎)は、不遜で偏屈な性格で、妻を亡くして以来、誰とも心を通わせることなく生きていた。一方、韓国、扶余郡。無職で怠惰な生活を送るヨナ(キム・コッピ)は、人付き合いもうまくできず、人生の目標も見出せずに、空虚な思いを抱いていた。交わるはずのなかった二人の運命は、ある日、剛生が病魔に倒れたことで、つながり合う。半身まひで介護が必要になった剛生の元にやって来たヘルパーは、和紙づくりの手伝いと勘違いして来日した、ヨナだったのだ。頑固で偏見に満ちた剛生は、ヨナを受け入れようとしない。勝気な性格のヨナもまた、剛生に反発してぶつかり合うばかり。言葉も、文化も、価値観もまるで違うために、介護もうまくいかない。

二人は、最悪のコンビだった…だが、ヨナの常識にとらわれない介護は、次第に、固く閉ざされた剛生の心を開いていく。
いつしか剛生とヨナは深い絆を育み、互いにかけがえのない存在になっていくのだが、二人を待っていたのは過酷な運命だった……。

 

出演:石倉三郎、キム・コッピ、吉岡里帆、森永悠希、宇野祥平、内田慈、日野陽仁
主題歌:「月の砂漠」城 南海(ポニーキャニオン)
監督:犬童一利
脚本:守口悠介
「つむぐもの」製作委員会:プリンシパル、丹南ケーブルテレビ、ソウルエイジ
(C)2016 「つむぐもの」製作委員会

映画「つむぐもの」公式HP  http://www.tsumugumono.com/

2016.03.07