幕が上がるとステージの片隅から老けた伯爵が歩いてくる。曲がった背と醜い顔をしているが、生に対する欲望は赤く燃えていた。ドラキュラになったジュンスのドラマはその瞬間から始まった。
ミュージカル「ドラキュラ」は、2年ぶりにまた観客を訪ねた。初演以降ストーリーは補完され、ステージはいっそう荘厳になった。ドラマがいっそう強調された「ドラキュラ」の中心にはジュンスが存在する。
ジュンスはこの作品で400年間、胸の中に愛をおさめて来た伯爵ドラキュラに扮する。愛する恋人を失って神を呪い、怒りで生を維持する男。今までミュージカルで平面的ではないキャラクターを多数こなしてきたが、今回ほどロマンスの中心に立つのは初めてだ。だから観客はジュンスが描き出すラブストーリーにたいへん期待をかけた。
ジュンスは負担になるほどの期待に、ただひたすら演技力で応えてきた。時空を超えて再び目の前に現われた恋人に向けた切ない求愛と爆走するような感情と、悲劇につながる愛の結末まで彼が描き出す愛は悲惨であるほどに美しく不完全であるが切なかった。ドラマを全身で表現する彼は、ステージ上で一番輝くドラキュラそのものだった。
またジュンスは、感情の起伏を独特なハスキーボイスで流れるように描き出した。いっそう成熟したナンバーの消化力だけでなくディテールな表情の変化とジェスチャーなどで観客に感情を伝達する。特に神に対する呪いを込めた叫びはナンバーなしでも観客を劇に引き込むほど印象深いシーンとして数えられる。
「ドラキュラ」のドラマは、ドラキュラという存在が持ったファンタジーを通して一層力を得る。ジュンスは永遠の生を生きる呪われた存在だというファンタジー的なキャラクターを彼なりのカラーで表現した。レッドヘアと華麗な衣装、拒絶しがたい魅力のボイスは、超越的な存在を観客に刻み付ける。
既にジュンスは、ミュージカル俳優として固有のカラーを持つほどに成長した。特に「ドラキュラ」を通して観客が彼に期待した典型的なキャラクター以上のキャラクターを創り出すことができる俳優であることを知らせた。ステージ上で独特な光を放つ俳優になった彼に、観客の拍手喝采が続いている。