
■相次いで「キャリアハイ」を更新した「ATEEZ」と「ENHYPEN」…その背景は?
■災い転じて福となす「ENHYPEN」、サンの『BAD』シンドローム…予想外の拡散が新規ファンを呼んだ
■「短期勝負」から「長期戦」へと流れが変わるK-POP市場
結局、アイドル市場でも「耐え抜く」ことが正解なのだろうか。デビュー7年目の「ENHYPEN」から9年目の「ATEEZ」まで、近ごろ活動歴を重ねたK-POPボーイズグループが相次いでキャリアの頂点を更新している。
かつてのK-POP界では、デビュー7年目に契約更新や解散の岐路を迎える「7年目のジンクス」が語られるほど、長期活動そのものが容易ではなかった。しかし、BTS(防弾少年団)をはじめ、確固たる音楽性とファンダムを築いたグループが長く第一線で活動するようになり、市場の常識も変化している。
デビュー直後の爆発的なヒットだけで、その後の歩みが決まるわけではない。長期戦の末に再び、あるいは初めて大衆の視線を引き寄せるグループも増えている。その代表的な存在が、今まさに新たな全盛期を迎えている「ENHYPEN」と「ATEEZ」だ。
長年積み上げてきた実力と物語は、どのようにして大きな成果へとつながったのだろうか。
「ENHYPEN」は最近リリースした8thミニアルバム『THE SIN:BLISS』で、米ビルボードのメインアルバムチャート「ビルボード200」最新チャート(9月5日付)の1位に輝いた。K-POPボーイズグループの歴史上、「ビルボード200」で1位を記録したのは、「ENHYPEN」を含めてわずか6組だ。
同作は、韓国の音楽集計サイト「HANTEOチャート」基準で、初動売上枚数(発売後1週間のアルバム売上枚数)が209万枚を突破。「ENHYPEN」は、グループ通算5作目となるダブルミリオンセラー作品を生み出した。
さらに、Billboard JAPANの主要チャートで2冠を達成し、オリコンチャートでも3部門の首位を獲得。今回の活動では音楽番組で計6個のトロフィーを手にし、グループの自己最多記録を更新した。
海外で着実に支持を広げ、K-POPを代表するアイドルグループの1組として名を知らしめてきた「ENHYPEN」だが、韓国では大衆的な知名度が相対的に高いとは言い難かった。しかし今回の活動では、ビルボードでの成果に加え、韓国の音楽番組で6冠を達成し、国内でも存在感を一段と高めた。
最近では、新羅免税店の新たな顔にも抜てきされた。免税店は、韓国から海外へ向かう旅行客と、海外から韓国を訪れる外国人観光客の双方を主要顧客とする業界だ。その広告モデルへの起用もまた、「ENHYPEN」の韓国内外における知名度の高まりを示す象徴的な出来事といえる。
今回の成果が特に注目されるのは、「ENHYPEN」がデビュー7年目を迎えたことに加え、メンバーのヒスン(HEESEUNG)の脱退という大きな変化を経験した直後に成し遂げたものだからだ。脱退後はEVANとして活動している。
一方、「ATEEZ」も海外ではすでに強い存在感を示してきた。今年までに「ビルボード200」で3度も1位を獲得し、「コーチェラ」や「SUMMER SONIC」などの大規模な海外フェスティバルにも出演。早くから世界市場でK-POPを代表するグループの1組として地位を築いてきた。
アルバムでは、2022年にリリースした『THE WORLD EP.1:MOVEMENT』が累計売上100万枚を突破し、早々にミリオンセラーを達成した。しかし、韓国の音源チャートでは、世界的な活躍に見合うほどの成果をなかなか上げられずにいた。
そんな「ATEEZ」が、今年6月にリリースした14thミニアルバム『GOLDEN HOUR:Part.5』のタイトル曲『BAD』で、長年の悔しさを晴らした。『BAD』は、韓国最大級の音楽配信サイトMelonの「TOP100」で、10日午前現在、7位を維持している。リリースから2カ月以上が経過した現在も、チャートでロングヒットを続けている。
海外で先に確固たる地位を築いた「ATEEZ」が、デビュー9年目にして韓国の大衆にも広く届き始めたのだ。この「遅れて訪れた飛躍」は、いったいどのようにして生まれたのだろうか。
両グループの上昇ぶりを見てみると、予想外の共通点が浮かび上がる。それが「バイラル」だ。
大衆文化評論家のシム・ジェゴル氏は、韓国メディア「Herald Muse」に「バイラルは、大衆がアーティストを新たに発見するきっかけとなる強力な要素の1つだ」と説明。「短い映像が特別な説明なしに直感的な興味を引き起こし、新たなファンを呼び込む入り口になることもある」と分析した。
■予想外のバイラルが、新たな「ファンへの入り口」に
「ENHYPEN」は今年4月、ヒスンが脱退を発表し、大きな変化を経験した。ヒスンはグループのメインボーカルであり、人気メンバーとしても重要な位置を占めていただけに、その離脱は「ENHYPEN」にとって大きな危機になるともみられた。
しかし、その危機は好機へと変わった。
6人組として再編された「ENHYPEN」は、ヒスンの脱退後初となるワールドツアー「ENHYPEN WORLD TOUR ‘BLOOD SAGA’」で、その不在を感じさせない完成度の高いライブとパフォーマンスを披露。予期せぬ変化を乗り越え、グループとして揺るぎなく活動を続ける姿を見せた。
爆発的な反響を受け、同ワールドツアーは来年3月、ベルリンとロンドンでの追加公演も決定している。
また、「ENHYPEN」はヒスンの脱退を受け入れようとしない一部の海外ファンの声に対しても、あいまいな態度を取らなかった。リーダーのジョンウォン(JUNGWON)がライブ配信を行い、正面から向き合う姿が大きな話題を呼んだ。
こうした瞬間はショート動画として切り取られ、SNSを通じて急速に拡散された。危機に向き合う率直な姿勢や、6人になっても揺るがないステージ上の実力が、それまでグループを詳しく知らなかった人々にも届き、新たなファンの流入につながった。
「ATEEZ」もまた、バイラル効果の恩恵を大きく受けた。
2024年11月に『Ice On My Teeth』で活動した際、メンバーのサン(SAN)が、韓国のウェブ小説などに登場する冷徹でカリスマ性のある男性像を意味する「北部大公」という愛称で呼ばれ、「ATEEZ」は韓国での知名度を少しずつ高めていった。そして、『BAD』を通じて本格的なバイラルを巻き起こした。
特に、ノースリーブの衣装を着たサンの強烈なパフォーマンスがSNSを中心に話題となり、楽曲そのものへの関心につながった。サンの『BAD』のチッケム(メンバー個人に焦点を当てた映像)は約10秒の短い動画に編集され、ファンの間で「タチュクチャ・パート」と呼ばれながら拡散された。
「タチュクチャ」は、直訳すると「みんな死のうぜ」という意味だ。ここでは文字通りの意味ではなく、全員をノックアウトするほど強烈な、すべてを出し切るようなサンの鬼気迫るパフォーマンスを表した呼び名として使われている。
さらに、その映像を使ったパロディーやリアクション動画も相次いで投稿され、話題はステージを見たファンの外側へと広がっていった。サンの一瞬のパフォーマンスが楽曲への興味を生み、楽曲から「ATEEZ」というグループへと関心が移っていく。その流れが、海外ですでに地位を確立していた「ATEEZ」を、韓国の音源チャートでも上昇させる出発点となった。
ただし、バイラルそのものが成功の原因だと断定することはできない。偶然注目を集めることと、その関心を長期的な人気や成果へつなげることは別の問題だからだ。
シム・ジェゴル大衆文化評論家は、両グループの長期的な成果について「活動年数を示す数字が、すべてを物語っている」とし、「着実に積み重ねてきたアルバムと公演、次第に厚みを増してきたグループの物語、そしてチームを支えるファンダム。長い年月が流れても健在である理由は明確だった」と分析した。
「ENHYPEN」と「ATEEZ」は、長い時間をかけて、それぞれ独自のカラーとアイデンティティーを築いてきたグループだ。
「ENHYPEN」は、デビュー当初から続くバンパイアの世界観を軸に、独特のグループカラーを作り上げてきた。楽曲やアルバム、パフォーマンスに連続性を持たせることで、グループならではの物語を着実に積み重ねてきたのだ。
一方、「ATEEZ」も、強烈なパフォーマンスとセクシーさを兼ね備えたヒップホップ色を一貫して維持してきた。流行や大衆性だけを追うのではなく、自分たちが得意とする音楽とステージを磨き続けてきた。その蓄積があったからこそ、短い動画で初めて彼らを知った人々を、次の楽曲やステージへと引き込むことができた。
予想外のバイラルは、両グループに初めて触れる人々にとって、新たにファンになる入り口となった。しかし、その入り口の先に長年積み重ねてきた多彩なコンテンツや確かな実力がなければ、一時的な話題で終わっていた可能性もある。
既存のファンダムに新たなファンが加わり、SNS上の話題がアルバム売上や音源チャート、音楽番組での成績へとつながった。「ENHYPEN」と「ATEEZ」の飛躍は、予想外のバイラルだけでは説明できない。長い時間をかけて築いてきた土台の上に、新たな関心が重なった結果なのだ。
両グループの事例は、一度のバイラルによって突然成功した物語ではない。長年守ってきたグループのカラーとファンダムが新たな関心と出会い、もう一度大きな上昇気流を生み出したという点に意味がある。
かつては、多くのアイドルグループがデビュー7年目に契約更新や解散の岐路を迎える「7年目のジンクス」に直面し、長期間にわたって活動を続けること自体が容易ではなかった。メンバーの変化を乗り越えられず、十分な音楽的資産を積み上げる前に活動を終えるグループも少なくなかった。
しかし最近では、活動歴の長いグループが従来のカラーを守りながらも、ショート動画やSNSといった新たな方法でファン層を広げ、再び全盛期を迎える姿が目立っている。
シム・ジェゴル評論家は「現在は活動開始の段階から、長期的な視点に立ってロードマップを策定する傾向にある」と説明。「短期間で勝負をつけようと、意味のない刺激だけにこだわる事例は明らかに減った」と語った。
続けて、「こうした流れが続けば、コンテンツの質と量の両面で、その価値はいっそう高まるだろう」と展望した。
瞬間的な話題を生むことはできても、長く愛される理由を一朝一夕で作ることはできない。「ENHYPEN」と「ATEEZ」が見せたのは、予想外のバイラルを成果へ変えられるのは、結局のところ、長年積み上げてきた実力と物語、そしてファンダムの力だという事実だ。
K-POP市場の勝負は、もはやデビュー直後の短期決戦だけではない。時間を味方につけ、自分たちだけの色を磨き続けたグループには、7年目にも9年目にも、新たな全盛期を迎える可能性が残されている。
WOW!Korea提供









