「取材レポ」ソ・イングク 2年ぶりのコンサートを開催 「心がひとつとなったファンとソ・イングクを結ぶ“シグナル”」

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ブリッジ映像では、すべてのシグナルが途絶えた家の中で、アナログな環境で過ごすイングクの姿が映し出された。そこで明かされたのは、「SIGNAL」のタイトルに込められた意味。“SIG”は“ソ・イングク”のイニシャルで“NAL”は韓国語で“日”。つまり「SIGNALはソ・イングクの日」ということに気づくという物語だ。そして、ネットも使えない環境で何もすることがなくなったイングクは「とりあえず、昼寝でもしよう。寝て起きたら、僕たちまた会えるしね」とつぶやく。その言葉と共に映像がフェードアウトすると、真っ白な衣装をまとったイングクがステージに再登場し、「昼寝」を披露した。浮遊感のあるサウンドに身を任せ、ゆったりと横揺れしながら歌うイングク。続く「Stupid」でもミディアムテンポのリズムに、彼の甘くしなやかな歌声が溶け合い、ファンの心を静かにとろけさせた。

繊細で滑らかな歌声はさらに深みを増し、「Dawn」ではフィンガースナップのリズムに合わせて軽やかに指を鳴らす仕草をしながら音に身を委ねる。「Youth」では柔らかなギターの響きと共に、どこか儚く夢のような空気を漂わせた。「Everlasting Love」では美しいピアノのメロディに乗せて、切なさと温もりをたたえた声で伸びやかに歌い上げた。雪が舞う幻想的なステージに変わると、「君という季節(Japanese ver.)」を披露。「♪春夏秋冬 季節めぐっても まだ信じてるよ 君の帰りを 変わらない思いだよ」と、恋人への懐かしさと別れの後に残る温かな余韻を描くその歌声に、ファンは息をのんだまま聴き入り、最後の一音が消えた瞬間、大きな拍手がステージを包み込んだ。

イングクは「雪の降る演出をしてみました。ステージで雪が降るから、感情が込み上げてきて、『Everlasting Love』から感情が込み上げてきました」と語った。さらに、初雪に関するエピソードも明かした。イングクの故郷・ウルサンでは雪がほとんど降らない地域のため、雪が降る日はクリスマスになるそうだ。そのため、雪に関する防寒対策がなかったことから、雪が降った日にうれしくて友達と遊びに出かけることにし、ダウンジャケットも着ずに普通の服装で傘も持たずに遊びに行ったという。そして彼は「全身びしょ濡れになって大変な思いをしたので、雪はあまり好きじゃないです。雪は綺麗なゴミだと考えています」と、会場の笑いを誘った。

そして、彼は「雪は家で一杯飲みながら見るのが一番です。こたつの中に入って、みかんを食べながら外を眺め…」と話すと、続けて「今の東京の気候は最高だと思います。今、韓国がは寒いだろうけど、僕はここにいて良かったと思います、寒いのが嫌いなんです」と話すと、ファンからは「(韓国に)行かないで!」という声が飛び交った。


 

コンサートが終盤に差し掛かると、イングクは「皆さん!」と力強く呼びかけ、勢いよく「Right now」を披露。頭を振ったりジャンプをしたりしながら、熱気あふれるステージを作り上げた「愛の言葉」。続く「トナリアワセ」では、優しく寄り添うような歌声でファンの心を包み込み、会場を優しい空気に変える。そして、そのままサザンオールスターズの「TSUNAMI」へ。情感豊かな歌声が波のように押し寄せると、ファンからは「最高!」と声があがり、感動の声が会場を満たした。

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彼は「(TSUNAMIは)本当に大好きな曲なんです。ご存知だと思いますが、いくつかの曲の中で悩みました。韓国でリメイクされた日本の曲はたくさんあるんです。中でも、『I love you』が大好きで、歌おうか考えてみたんですけど、韓国版は音節が短いんです。日本の原曲の音節はもっとたくさんあるじゃないですか。なので、この曲は次回チャレンジしてみたいと思います。それから、平井堅さんの曲(「瞳をとじて)も歌ってみたいと思います」とファンの期待を興奮を沙汰に高め、次回コンサートへの期待感を残しながら、熱量あふれるステージはクライマックスへと突入していた。

時間が過ぎるのはあっという間。「次の曲が最後」と告げると、会場からは惜しむような「えー!」という声が湧き上がった。「本当に本当に最後の曲なんです」と、言いつつも「無理矢理でも作るべき? でもとりあえずみなさんのリアクションを見て、僕が気に入らなかったらここで終わります。でもすごく情熱的だったら…」と、期待を煽るイングク。ファンの心を一瞬で釘付けにすると、最後の曲「君という花」のステージへ。温かみのあるサウンドに包まれ、優しく歌うイングクの声に会場は酔いしれる。曲の途中では、ファンによるスローガンサプライズもあり、イングクは「最高!」と親指を立てて応える。「ありがとうございます!」と伝えながら走ってステージを去ると、「ソ・イングク」コールが大きく響き渡った。

その後、ビジョンにはコミカルな映像が流れる。イングクが病院で「単語アレルギー」だと診断され、アレルギー反応を示す言葉は、「エギヤ(My baby)」。その言葉を聞くと、くしゃみが止まらなくなるという。しかし、医者からは“毒を持って毒を制す”という方法で、多くの人たちから“エギヤ”という言葉を浴びれば治ると言われる。そして、カメラ目線のイングクの映像に「みなさん、何をすればわかりますよね」という文字が映ると、 “3、2、1”とカウントと共に「エギヤ!」と声が飛び交う。その瞬間、イングクはアレルギーを克服し、アンコールとしてステージに再登場した。

透明のリュックを背負って、ちょっと照れくさそうに披露した「My baby U(エギヤ)」では、可愛らしいダンスで愛嬌を振りまき、ファンの「エギヤ!」と叫ぶ声を全身で受け止めて満面の笑み。最後には投げキッスをするように指ハートを作って見せ、ファンにとびっきりの愛を届けた。

歌い終えたイングクは、「楽しいですか? 私も楽しいです。本当にありがとうございます。大阪から始まり、今日は東京で最後の公演です。コンサートをすることができたのは、みなさんが僕のことを愛してくださったからだと思います。“SIGNAL”の最高のチームに出会えましたし、最高のバンドの皆さんに出会えましたし、最高のスタッフに出会えましたし、そして今日東京の最高の観客の皆さんにもお会いしました」と感謝の想いを熱く伝える。そして、「最後の曲を歌います」と告げると、ファンからは「えー!」と惜しむ声が会場に響く中、「もうないよ」と笑いながら「Couple」を披露。イングクは客席に降りて、リュックからプレゼント投げながらファンと直接ふれあい、ファンとの温かいひとときを楽しむ。

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ステージに戻ると、「本当にありがとうございます」と日本語で伝え、深々とお辞儀をすると、ステージ中央の階段を上り、「みなさん、ありがとうございます」と手を振ってステージを去っていった。しかし、ファンの「イングクとまだ一緒にいたい」という気持ちが一つになり、「ソ・イングク」コールは鳴り止まず、しばらくコールが続くと、一度ステージを離れたバンドメンバーが戻理、ピアノにスポットライトが当たる。そして、切ないメロディが会場に響き渡ると、ゆっくりとイングクが姿を現し、米津玄師の「Lemon」を披露。ダブルアンコールで戻ってきてくれたイングクに、大歓声と拍手が送られると、彼は「みなさんのためにまた登場しました。準備できましたか? 準備できましたか? 最後まで盛り上がっていくぞ!」と呼びかけ、「愛の言葉」、「Bebe」、「Mint Chocolate」と続けてパフォーマンス。最後はファンとソ・イングクが一つになる「All for you」を披露。最初のパートはファンが自信たっぷりに歌いあげると、その歌声に「すごいですね」と喜ぶイングク。この曲でもイングクが客席に降りて、ファン一人ひとりと目を合わせながらハイタッチやハートを作ったりしてファンを喜ばせる。そして、会場を包む大合唱は、ファンとイングクの心を結ぶ“シグナル”となり、全員が一体となった瞬間だった。

最後に彼は「今日は本当にありがとうございました。皆さんが喜んでくれて、情熱的に歌ってくれてたので僕もとても幸せでした。1階をまわりましたが、2階、3階、4階のみなさんも愛しています。本当にありがとうございます。みなさんが楽しんでくださったのであればうれしいです」と感謝をのべ、「また会いましょう!」と再会を約束し、「バイ!」と言って走ってステージを後にした。

コンサートが終わってもファンとソ・イングクのつながりは消えることなく、お互いの心の中で静かに輝き続けた。

取材:Korepo(KOREAREPORT INC.)

 

2025.11.13