「イベントレポ」映画『ケナは韓国が嫌いで』 「第二のホン・サンス」「韓国の是枝裕和」と称される チェン・ゴンジェ監督 公開記念舞台挨拶オフィシャルレポート


映画の中で描かれる若者の生きづらさについて訊かれると、「僕はいま、若者というわけではないので正確に伝えられるかは分からないですが、この映画を作りながら体感したことがありました。若い世代の苦痛のようなものを感知できた部分があったんです。作品を通して若い人たちの声をもっと政治家へ伝えないといけないと思うんです。若者の少し上の世代として、変化をさせてあげるという立場ではなく、若い人たちが声をあげるように動き出したこと自体が、いい変化だと感じています」と語った。
原作との違いについては、ケナの渡航先がオーストラリアからニュージーランドに変更された点に言及。ニュージーランドを選んだ理由として、「シナリオハンティングで、オーストラリアにもニュージーランドにも行きましたが、その中で留学生や移民された方、ワーキングホリデーに来ている若者に取材するなかで、ニュージーランドに決めました。抱えている事情や、孤独だったり、寂しさを話してくれたんです」と振り返り、続けて「女性の社会参画が高い国で、当時は女性のアーダーン首相でしたし、国の首脳として初めて産休取得という記憶があります。そういったところが、ケナが行く場所としてふさわしいのではないかなと思いました」と説明した。
劇中でも度々登場する「幸せ」というキーワードについて、監督は「幸せや救いといった言葉はとても大げさなものだと思うので、映画を作る時にそれをテーマにすると言う事自体がとても大げさな気がしました」と述べつつも、「映画の中でケナが友達に、『あの何年か幸せを探してみたけども、そんな大したもんじゃなかった。お腹が空かなくって寒くなければそれだけで幸せなんだ』言うセリフが出てきますが、これは私自身の感じている幸せでもあって、大それたものが幸せというわけではないと思っています」という自身の考える幸せの定義を表現したことを明かした。
最後に、監督は「韓国で昨年の8月に公開されて予算規模の大きな映画ではないのですが、こうやって日本まで来て公開することができ、こうやって金曜日の夜に劇場に来てくださって、皆様、本当にありがとうございます」と感謝の意を述べ、観客からの大きな拍手に包まれ、大盛況のうちにイベントは幕を閉じた。
映画『ケナは韓国が嫌いで』は、全国順次公開中。

【STORY】
ソウル郊外で両親と妹と共に暮らす28歳のケナ(コ・アソン)。大学を卒業後、金融会社に就職し、毎日片道2時間かけてソウル市内の会社に通勤している。大学時代から長く付き合っている恋人のジミョン(キム・ウギョム)は、外国に行きたいと言うケナに反対し、「自分が就職したら支える」と伝えるが、そんなジミョンにケナは苛立ちを隠せない。だが、ケナの母は、裕福な家庭で育ったジミョンとの結婚を待ち望んでいた。一方、ケナが家族と暮らす小さな団地は老朽化が進み、再開発が予定されていたが、母は転居先の家の購入費用もケナに頼ろうとしていた。
ソウルの寒すぎる冬、地獄のような通勤、恋人との不透明な未来、仲は良いけれど古い価値観を持つ家族との日々ーー。ここでは幸せになれないと思ったケナは、ニュージーランドへの移住を決意する。


監督・脚本:チャン・ゴンジェ『ひと夏のファンタジア』
出演:コ・アソン『グエムル-漢江の怪物-』 チュ・ジョンヒョク「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」
キム・ウギョム イ・サンヒ オ・ミンエ パク・スンヒョン
2024年/韓国/韓国語・英語/107分/カラー/原題:한국이 싫어서/日本語字幕:本田恵子
配給|アニモプロデュース
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公式HP https://animoproduce.co.jp/bihk/
公式X/Instagram @bihk_film

ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネ・リーブル池袋ほか全国公開中!

2025.03.08