圧倒的な歌唱力を誇り、国民的グループgodのメインボーカルとしてのみならず、ソロアーティスト、プロデューサーとしても活躍しているキム・テウ。今年6月に韓国でリリースした3rdアルバム「T-ROAD」を引っさげ、ソウルを皮切りに全国ツアーを展開していた彼が、約2年ぶりに来日。
9月5日(土)東京・日経ホールにて、単独コンサート「KIM TAEWOO『T-ROAD』in JAPAN」を昼夜2公演にわたり開催した。
「T-ROAD」は、これまでの音楽人生と現在、そして未来を表現した、まさにキム・テウの“道”。着実に、そして黙々と我が道を歩み、デビュー17年目となった彼の世界観に、観客はたっぷりと酔いしれた。
会場が暗転し、イントロが流れた後、徐々に幕が開くと、中央には秋の雰囲気漂う落ち着いた色合いのスーツにサングラス姿で、オーラを漂わせ悠然と立つキム・テウの姿が。ブルーのライトに照らされ、幻想的な雰囲気の中、「T-ROAD」のリード曲であるバラード「君に似る」で、夜公演がスタートした。
ファンの大歓声が一瞬で静まり返るほど、甘く透き通った、伸びやかな歌声を会場中に響かせたキム・テウ。オープニングから圧倒的な存在感で、確かな力量を見せつけると、続くヒット曲「愛の雨」では観客が総立ちとなり、雰囲気が一変。キム・テウのあおりで、会場中が大合唱し、ボルテージは早くも最高潮となった。
興奮さめやらぬ中、「皆さんこんにちは。お会いできてうれしいです!」とあいさつしたキム・テウ。「お元気でしたか? 久しぶりですね。さっき3時の公演を見てくださった方もいらっしゃいますが、それでも久しぶりですね」と冗談交じりに話すと、「座ってもいいですよ」とファンを気遣う優しさを見せた。
そして、「喉の調子は良くないんですが、7時の公演はさらに楽しいと思います。なぜかと言うと、この後はもう公演がないからです(笑)」とお茶目に笑い、スタッフに客席を明るくするよう指示すると、キム・テウ恒例の男性客いじりがスタート(笑)。通訳を介しながら、軽快にトークを進めていく。
会場には幅広い年齢層の男性客の姿も目立ち、godの大ヒット曲「道」の頃から知っているという男性を“お父さん”と呼び、ひとしきり会話を交わして会場を盛り上げたキム・テウ。公演タイトル「T-ROAD」について、「僕が夢を見て、その夢を叶え、これからもその夢を持ち続けるために努力していく姿、そのすべてが音楽で表現される僕の人生そのものが、キム・テウの道だと思います。きょうはステージを見ながら、一緒にキム・テウの音楽人生を歩いてほしいです!」と伝えると、会場からは温かい拍手が起こった。
OSTコーナーに入り、キム・テウの親友でもあるRAIN主演のドラマ「僕には愛しすぎる彼女」のOST「君一人だけ」、イ・ビョンホン主演のドラマ「IRIS-アイリス-」のOST「夢を見る」を続けて熱唱した後、再び男性客いじり(笑)。去年、キム・テウが結婚式でお祝いの歌を歌ったという男性ファンとの再会もあり、さらに気分をよくしたキム・テウ。
今回も携帯電話イベントが始まり、入場の際、ファンが書いておいた携帯電話の紙を1枚選び、電話をかけた。「男性が当たったら、もう1回引く」と言っていたが、希望通り女性につながり、そのラッキーな女性はステージに。恋人のようにエスコートされながら、目の前でキム・テウが自分のために歌を歌ってくれるという特権を得て、大興奮の様子だった。
歌う曲は、事前に募集していたキム・テウに歌ってほしい日本語曲のリクエストの中から選ばれた、平井堅の「瞳をとじて」。ステージ上でキム・テウに見詰められ、終始幸せそうな笑顔の女性を見ながら、観客も自分に置き換え、会場中が彼の優しい歌声にうっとり聴き惚れ、前半が終了した。
衣装チェンジをしたキム・テウは、オレンジのジャケットに白のパンツ、そしてメガネをかけた姿で現れ、後半は、懐かしい思い出を振り返るgodメドレーから。「お母さんへ」「愛してる、そして覚えていて」と続いた後、「うれしいゲスト、4人の兄貴たちが来てくれました」という紹介で、キム・テウの両サイドにマイクスタンドが2本ずつ設置され、名曲「嘘」が流れると、客席からは待ってましたとばかりに大歓声が。それぞれのパートごとに、マイクスタンドにスポットが当てられる演出で、ファンも一段と大きな掛け声で声援を送った。
歌い終えたキム・テウは「(メンバーたちが)いるような感じがしたでしょ? 音楽というものはそういうものです」としみじみと語り、次の曲紹介では、オープニングのあいさつで会話をした男性に向かって、「“お父さん”のために歌います(笑)」と気の利いたコメントで、「道」を聴かせ、郷愁を誘った。
そして、キム・テウは「皆さんの表情を見ていたら、この曲を待っていてくださったようですね。音楽はものすごく大きな力を持っていると思います。いくら時間が流れても、その曲を聴くと、そのときにあったすべてのことが思い出されます」と語り、会場は温かい雰囲気に包まれた。
「では、これからは走る時間です!」と客席をあおり、“お父さん”、携帯電話イベントに当選した女性など、観客の4人を立たせたキム・テウは、「最初に4人のダンスの実力を見た後、“立って”と言ったら皆さん立ってください」と説明し、「T-ROAD」のもう一つのリード曲「Lonely Funk」が流れた。最初の4人がノリ良く踊るのを見届けたキム・テウは全員を立たせ、会場は一瞬にしてダンスフロアと化した。
その勢いのまま、godの「Friday Night」でさらにノリノリに。観客と息を合わせた後は、キム・テウのダンスタイム! マイクを置いたキム・テウは、godの曲に合わせ、大きな体を揺らしながら、キレのあるダンスを披露。途中で一息つきつつも(笑)、最後までパワフルに踊ったキム・テウに、この日一番の大歓声が上がった。
見事に踊り切り、充実した表情を浮かべるキム・テウは「今度は皆さんの番です!」と、ドラマ「紳士の品格」のOST「HIGH HIGH」のダンスレクチャーを始めた。みんながマスターすると「すごくカッコいい!素晴らしい! すごい! かわいい!」と日本語で客席を褒めちぎり、「行きましょう! レッツゴー!」と「HIGH HIGH」を。会場にいる全員が一つとなり、歌いながら踊る圧巻の光景が広がった。
「最高!」と大満足のキム・テウは、ファンを座らせ、「ストレスを解消しましたか? 僕は皆さんにとって栄養剤のような存在になりたいと思っています。なので、公演では楽しく幸せに、思い切り楽しんでほしいです!僕はビタミンです」とはにかんだように笑い、「残り1曲となりました」と伝えると、客席からは「えー!」と残念がる声が。
すると、キム・テウは「日本語の中で、一番完璧な単語は“えー”です。なぜなら、どんな場面でも使えるから」と、おいしいものを食べた後も、残念なときも、怒るときも使えるから、一番完璧な言葉であり、一番好きだと力説。そして、ニヤニヤしながら「皆さん、ついに残り1曲となりました!」と振り、客席が「えー」とお約束通りに答えるという、コントのようなやりとりをし、最後までファンとの会話を楽しんだキム・テウ。
最後はまた雰囲気を変え、珠玉のバラード「言いたいこと」で、心に響く表現力豊かな歌声を届けると、マイクを使わず地声で、「皆さんありがとうございます!」と後ろまで届くような大きい声で感謝の気持ちを伝え、ステージを後にした。
「キム・テウ」コールを受け、再登場したキム・テウは「いただきます。僕が皆さんに素晴らしい、ステキなエネルギーをいただいて帰ります。皆さんのエネルギーを僕が食べます。だから、いただきます!」とユニークな表現で、再びファンに感謝し、アンコール曲はgodの「ロウソク一つ」を披露。
この曲も韓国語曲なのに、ファンが声をそろえて大合唱し、感動的な雰囲気で曲も終わりに差し掛かったとき、キム・テウが最後の歌詞「ソン チャバ ジュルケ(手をつかんであげるよ)」の“ケ”をみんなでハモって歌いたいと提案。客席を3ブロックに分け、それぞれがキーを確認した後、「皆さん、最後の一文字を一緒に歌いましょう! きょうこの公演の全ての思い出を心の中に大事にしまっておいてください」と呼びかけ、キム・テウの合図で「ケ」をキレイにハモり、心地よい一体感が生まれてフィナーレ。キム・テウが客席にとびきりの投げキスをし、ゆっくりと幕が閉まった。
安定感抜群の歌唱力、パフォーマンスは言うまでもないが、通訳を挟んだ韓国語のMCで、これだけ観客と即興で掛け合いをし、観客の心をがっちりつかむキム・テウは、まさに韓国を代表する最高のエンターテイナーだった。
今年12月にはソウルで、godの年末コンサートが控えているキム・テウ。グループとして、ソロとして、ますます活躍が期待されるキム・テウの音楽人生に今後も注目し、見守り続けたい。そう思わせる、いつまでの余韻の残る、上質なコンサートだった。
取材:Korepo(KOREAREPORT INC)