「夜を歩く士」は行って、イ・ジュンギは残った。MBCの水木ドラマ「夜を歩く士」は、イ・ジュンギの、イ・ジュンギによる、イ・ジュンギのためのドラマだと言っても過言ではなかった。
10日に終映した「夜を歩く士」は、同名のWeb漫画を原作にしたファンタジーフュージョン時代劇を標榜して、人間の本性を失わないバンパイア士ソンヨル(イ・ジュンギ)が、絶対悪に立ち向かう秘策が書かれた正弦(チョンヒョン)世子備忘録を探しながら出会った男装の書籍商人ヤンソン(イ・ユビ)と繰り広げる命がけのラブストーリーを描いた。原作の人気といっしょに原作のキャラクターと高いシンクロ率を誇るキャスティングで話題の中心にあった「夜を歩く士」の開始は華麗だった。しかしそれも束の間、単純なドラマの構造と展開は視聴者を疲れさせた。
こうして「夜を歩く士」が視聴者の高かった期待を満たすことができない渦中にも、キャラクターの中心を失わないでドラマをリードしたのはまさにイ・ジュンギだった。彼はドラマ初盤から「朝鮮時代に吸血鬼が存在した」という独特な設定を完璧に表現し、悲しい運命を背負ったバンパイア士ソンヨルになりきった姿で視聴者の視線を捕らえた。愛する人を鬼(イ・スヒョク)の手に失ったソンヨルは、鬼を倒して自分も死を迎えるのが宿願であるかのように暮して来た。それでイ・ジュンギは、ヤンソンに会うまでは復讐以外にはすべてのものに無情で冷たいソンヨルを演じ、ヤンソンと会って少しずつ心を開いてヤンソンを愛するようになる過程を纎細な眼差しと口ぶり、表情で表現した。特に紆余曲折の多かったこのカップルのストーリーの中でイ・ジュンギは、ヤンソンに向けた切ない恋心とロマンスを描き出した。
またイ・ジュンギは、ドラマでバンパイアの本能と人間の間で葛藤する姿を描き出した。彼は善良な眼差しと口調の守護鬼キム・ソンヨルと髪の毛を長く垂らして長いドポを着て邪悪に微笑み本能を刺激する吸血鬼キム・ソンヨル、そしてその間で心細い表情と身振りで理性と本能の間で迷う人間ソンヨルの姿を描き出して絶頂の演技力を見せた。役目によって顔の筋肉と声、呼吸などを変えて1人3役を公開したイ・ジュンギの演技力はただひとつの欠点も探し出すことが出来なかった。
バンパイアはドラマや映画でありがちな素材だが、実存するキャラクターではないためそれを説得力を持って描き出すためには何にもまして俳優のしっかりした演技力に裏付けしなければならない。初放送の当時イ・ジュンギは、バンパイアに変身する様子を自分が活用することができる最高の表現力で描き出し、強烈て吸引力のある演技に視聴者はバンパイアというキャラクターを拒否感なしに受け入れるようになった。ソンヨルという人物は、イ・ジュンギに会ってドラマの中で生きて呼吸するようになった。想像以上に自分の役割りをやりこなす俳優イ・ジュンギは、こうしてドラマの成果とは別に「Godジュンギ」という称号が似合う最高の俳優であることを再度証明した。