「コラム」韓国の社会事情「儒教的な礼儀」

写真=植村 誠

たとえば日本で、年上の前で横を向いて酒を飲んだら、「なんだ、飲みたくないのに仕方なく飲むのか」と思われるかもしれません。おそらく、失礼に当たるでしょう。しかし、韓国では違います。横を向かないと、かえって失礼になるのです。その理由はなんでしょうか。

 

酒と煙草の礼儀
韓国では年上と年下の人間関係がとても厳格です。
年下は常に礼儀を守らなければいけません。ですから、年下が年上の前で煙草を吸ったりすると、大変な失礼になるとされてきました。
酒も同様です。
年下が年上の前で酒を飲むというのは、かつては「生意気だ」と見られることが多かったのです。そこで、年下の者は、横を向いて酒を飲んで、年上の人から見えないように配慮していました。
特に、初対面のときは、年下はかならず年上に気をつかって、横を向いて酒を飲み、「礼儀を守っています」というポーズを取らなければなりませんでした。
そして、年上から「そこまでしなくていいよ」と許可されれば、ようやく前を向いて酒を飲むことができました。
煙草を吸うときも、年下は横を向きます。さらに、煙が年上の人のほうにいかないように十分注意します。


儒教的に言えば、「礼儀は形で見せる」ことが大切なのです。
年上と酒席をともにするときに年下が横を向いて酒を飲むのも、一番わかりやすい礼儀の形です。
あるいは、年上に何かを手渡すときに、もう一方の手を差し出した腕に添える、というのも、「形で礼儀を見せる」ことの典型です。
韓国に行くと、コンビニでも店員さんがお釣りをくれるときに、差し出した腕にもう一方の手を添えています。
言葉づかいはもちろんのこと、きちんと形で見せるのが韓国的な礼儀です。
年上の前で横を向いて酒を飲むというのも、「長幼の序を守るための大切な形」と考えれば、あの姿も納得できます。
礼儀はあくまでも、相手の気持ちをそこなわない、ということが前提です。年下が横を向いて酒を飲むのも、韓国的には礼儀にかなったことなのです。

文=「ロコレ」編集部

 

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コラム提供:ロコレ

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2024.07.16