普通ドラマを見ながら俳優が演技をしていると感じる瞬間、熱が冷めてしまうものだ。登場人物だけがみえる時、視聴者がキャラクターの感情を感じる時、ドラマはおもしろくその俳優が演技がうまいと感じるものだ。そういう点で俳優イ・ジュンギは、演技しにくいといわれる時代劇で怪物のような吸引力を見せている。愛という感情に震える彼の眼差しだけでドラマに十分にはまり込んで見てしまうイ・ジュンギの時代劇はいつも成功だった。
イ・ジュンギは、MBC水木ドラマ「夜を歩く士」で善良な吸血鬼のキム・ソンヨルに変身した。邪悪な吸血鬼の鬼(イ・スヒョク)を倒して朝鮮の平和に責任を持つ英雄が、イ・ジュンギが表現するソンヨルだ。このドラマは、吸血鬼が登場はするが最大のポイントは愛であり、自分の存在のため近付くことができないソンヨルの切ない愛がドラマをリードしている。
ここでイ・ジュンギの真価が証明される。デビュー以降、演技力に対する問題が全くなかったと言っても過言ではないほど生まれつきの才能を持っていた。よく言われる作られたような美しいビジュアルではなく、どうかするととても鋭い印象を持っているにも関わらず彼の演じる人物はソフトなカリスマが漂う。そして、大衆を惹きつける奥深い感情を演じ、彼が切ない愛を表現する度に多くの人々の心をつかんでしまう。
23日に放送された「夜を歩く士」の第6話もやはりイ・ジュンギが展開する魅力的な男ソンヨルの切ない愛が視聴者の胸をときめかせた。いつのまにかチョ・ヤンソン(イ・ユビ)に惹かれたソンヨルが、わざとなんでもないふりをするかと思えば、ヤンソンを救うために命までも投げ出す切々たる姿は、多少流れが途切れる中にも説得力を持って描かれた。
イ・ジュンギは感情を表現するにあたって深い余韻を残すのだが、ここには強烈な視線がひとつの役割をしている。 怒りのみならず悲しみまで精密に映し出す彼の眼差しだけ見てもキャラクターの感情を推し量ることができ、その感情にのめりこませてしまう。俳優イ・ジュンギの最大の強点だといえるわけだ。
普通時代劇は現代劇より、視線を使っての演技がより印象的に表現される。時代劇特有の現実とのへだたりを、俳優がより豊富な感情表現をするとき、視聴者を効果的に説得することができる。感情表現においてイ・ジュンギは視線を活用しているが、毎作品ごとにその効果が視聴者にうまくアプローチする。「王の男」から始まって、「イルジメ(一枝梅)」、「アラン使道伝」、「朝鮮ガンマン」、「夜を歩く士」までと、時代劇とうまく合うずば抜けた演技力を備えているからだろう。今度も当然のように証明した「時代劇の最高峰イ・ジュンギ」のネームパワーは変わらなかった。