4月8日(水)、東京・サントリーホール(ブルーローズ)にて、韓国を代表する歌手イム・ヒョンジュによる一夜限りのプレミアム・コンサートが開催された。
イム・ヒョンジュは、12歳でデビューすると、その歌声から「声楽の神童」と称され、オベラとポップスを融合した「ポプラ」という新ジャンルを確立し、韓国で社会現象を巻き起こした。2003年2月には、ノ・ムヒョン元大統領野就任式で、歴代最年少歌手として国家を披露し、一躍韓国を代表するアーティストとしての地位を築き上げた。イム・ヒョンジュは、韓国ドラマ・映画等の主題歌を歌っていることでも広くその名を知られているが、日本映画「パッチギ!」(2005年)でも「イムジン河」を歌っており、日本とも縁の深い歌手の1人である。
この日、3年ぶりとなる「神童」イム・ヒョンジュの歌声を聴くため、会場には老若男女、数多くのファンが足を運んだ。会場の照明が暗転するとともに、ステージが神秘的なブルー一色に照らされると、ステージ中央にグレーのジャケットをスタイリッシュに着こなしたイム・ヒョンジュが登場、会場は大きな歓声に包まれた。
この日のコンサートは、1stステージと2ndステージの二部構成。1stステージのオープニングを飾ったのは、アルバム「FINALLY」の収録ナンバーである「Shenandoah」「I can’t do it」で、イントロのメロディーが静かに流れる中、イム・ヒョンジュが優しく歌い出すと、観客は息を止め、そのあまりにも美しく、優しく、そして切ない歌声に酔いしれた。
歌い終えたイム・ヒョンジュは、客席を見渡しながら笑顔で「皆さん、こんばんは。私はイム・ヒョンジュです。お久しぶりですね。3年ぶりの日本のソロコンサートでした。ありがとうございます。僕はとても皆さんに会いたかったです。今日は僕にとってすごく特別な日です。今日のコンサートでは、僕の最善を尽くして、僕の全てを皆さんに見せていくことをお約束します」と流暢な日本語と英語を交えてあいさつ。また、会場となったサントリーホールについては「僕はサントリーホール(でコンサートを開くの)が初めてです。すごく綺麗ですね」とコメントし、うれしそうな様子を見せた。
誰もが一度は耳にしたことであろうポップスソング、ナット・キング・コール(ジャズ・ピアニスト&シンガー)の「L-O-V-E」を明るく、ノリノリのダンスを交えて披露すると、客席のファンもそれに合わせてノリノリで手拍子を送るなど、イム・ヒョンジュとファンは早くも息ぴったりの様子。そして「今日はとても幸せです。こうして日本のファンの皆さんとこの美しいサントリーホールで日韓50周年を迎える年に、3年ぶりのコンサートを開くことができて、本当に感謝しています」と感慨深げに感謝の言葉を述べて、ミュージカル曲「Memory」をハリのある歌声で力強く歌い上げると、会場は大きな歓声に包まれ、中には感動のあまり思わず立ち上がるファンの姿も見られた。
ピアニスト・小野靖子によるピアノ演奏「Classic Inst(Piano Only)」から、選りすぐりのクラシック曲を集めた1stステージの後半がスタート。タキシードを着替えたイム・ヒョンジュが再び登場すると、会場全体を優しく包み込むような深みのある声で「FINALLY」の収録曲である「Ch’io Mai Vi Possa」「Ombra Mai Fu」に加え、この日のコンサートのために特別に用意されたフランスの楽曲「Apres Un Reve」、ワルツ調の「Me Voglio Fa’na casa」を披露すると、まるで奇跡のような美しい歌声とともに観客に笑顔と感動を届けた。
2ndステージは、迫力あふれる「Overture」でその幕開けを迎えた。イム・ヒョンジュが「今日はスペシャルなゲストをたくさんお呼びしています。まず一人目は…」と言ってファンの期待を高まらせたところで「平原綾香さん!」という声とともに、大きな拍手に迎えられて白いドレスに身を包んだ歌手・平原綾香がステージに登場!「皆さんこんばんは~!今日は呼んでくれて本当にありがとうございます」と笑顔であいさつをすると、自身の代表曲「Jupitar」の前半をソロで、後半はイム・ヒョンジュと息を合わせて、パワフルかつ透明感あふれる音色を紡ぎ出した。演奏後には、イム・ヒョンジュが「『Jupitar』を歌わせていただきましたが、愛知万博の1年記念公演の日に名古屋で一緒に歌わせていただいて、その年にソウルで行われた単独コンサートでもご一緒させていただいた以来で、今回10年ぶりです」と平原綾香とは10年ぶりの共演となることを明かし、観客を驚かせた。
さらには、平原綾香のオリジナル曲で、イム・ヒョンジュが韓国で初めてカバー曲としてリリースした「White Farewell/明日」もデュエットで初披露し、長きにわたる国境を越えた友情の深さを実感させた。平原綾香がステージをあとにすると、イム・ヒョンジュがソロで「Misty moon」「The Salkey Garden」「恋におちて」をファン1人1人に語りかけるように優しく歌い上げ、まさに「時代を癒す天上の歌」と呼ぶにふさわしい歌の数々で、会場に集まった観客の心を癒した。
コンサートもいよいよ終盤にさしかかってきたところで、2組目のゲストが登場!
「今日はスペシャルゲストをたくさんお呼びしていると話しましたよね。1人目は平原綾香さんでしたが、2人目は韓国の方です。ドラマ『太陽を抱く月』でよくご存知だと思いますし、先日日本でリリースされました『FINALLY』のミュージックビデオの主人公を務めてくださった2人の素敵な男性をお招きしています。皆さん、ソン・ジェヒさんと恭平くんです!」というイム・ヒョンジュの紹介に続いて、ソン・ジェヒとWAZZ UPの本庄恭平が登場。本庄恭平が「今日はこういう場所に呼んでいただき、ありがとうございます。今は音楽活動とかをしているんですけれども、WAZZ UPの恭平と言います。よろしくお願いします!」、ソン・ジェヒが少しはにかんだ笑顔で「Nice to meet you!」とそれぞれあいさつ。
そこで、イム・ヒョンジュがソン・ジェヒに「ソン・ジェヒさんは今回公式的なスケジュールではなく、個人的な旅行で日本にいらしているのですが、『つるとんたん(うどん屋)』に3回も行かれたようなんです。どうして3回も行ったんですか?(笑)」と聞いたところ、ソン・ジェヒが「僕はもともと日本のうどんが大好きです。それに『つるとんたん』は量が多いんです!(笑)」と答え、会場の雰囲気を和ませた。
さらには、イム・ヒョンジュがソン・ジェヒと本庄恭平を見ながら「ソン・ジェヒさんと恭平さんは、イケメンで背も高いので、2人には早く(舞台裏に)はけてほしいですね…もちろん冗談です!(笑)」とユーモアたっぷりに話す一幕もあり、たくさんの笑い声に包まれたトークコーナーとなった。
また、話題が『FINALLY』のショートフィルムに移ると、イム・ヒョンジュは「この場を借りて感謝を伝えたい方がいます。それは僕の母です。母はショートフィルムのプロデューサーでもあり、僕のマネージメント会社の社長でもあるのですが、制作費10万ドルを支援してくださいました。本当にありがとうございました」という制作秘話を明しつつ、親孝行な一面を見せた。また、ショートフィルムの撮影で印象に残っていることについて、ソン・ジェヒは「僕はちょうど別のドラマを撮影しているときにイム・ヒョンジュさんからオファーをいただいたので、ドラマの撮影の合間をぬって参加しました。最初は1日の予定だったのですが、2日間夜も眠れない状態で撮影をして、体力的にはとてもハードだったんですが、イム・ヒョンジュさんとはかねてよりお付き合いをさせていただいていたので、イム・ヒョンジュさんの作った作品であればぜひ参加したいと思い、頑張って撮影に臨みました!眠れませんでしたが、それほど大変ではありませんでした」と男らしい義理堅さを見せた。また、本庄恭平は「韓国に行ったのも10年ぶりくらいで、5日間撮影があって、結構ハードなスケジュールだったんですよ。そういうのは初めてだったので、ジェヒさんが疲れている僕を見てすごく爽やかな顔で『コリアンスタイル!』と言った印象的でした(笑)」と話し、ソン・ジェヒとの仲の良さを伺わせると、「僕の好きな友達であり、アーティストのイム・ヒョンジュさんのおかげで皆さんにお目にかかれて本当にうれしかったです。またお会いしましょう!」(ソン・ジェヒ)、「僕もこの場に呼んでいただけて、ミュージックビデオにも出させていただけて幸せでした。これからも機会があれば、仲良くさせてもらえたらと思います。」(本庄恭平)とそれぞれあいさつし、舞台をあとにした。
そして、イム・ヒョンジュによる感動にあふれたコンサートもいよいよエンディングへ。
イム・ヒョンジュは、ファンとのひと時を惜しむように、そのいとおしさを噛みしめるように「Lonely my love」を切なくも伸びやかに歌い上げた。また、韓国の悲痛なセウォル号の事故の被害者への追悼歌として多くの人に聞かれた「千の風になって」を韓国語で披露すると、その繊細で心の込もった歌声に涙するファンの姿も。そして最後は、プッチーニの「蝶々夫人」から「Un Bel Di Vedremo」で圧巻のステージを披露し、観客に深い印象を残した。こうして2時間にわたって奇跡の歌声で時代を癒す天上の歌を届けた「声楽の神童」イム・ヒョンジュの3年ぶりとなるコンサートは、大盛況のうちにその幕を下ろした。
これからも日韓のみならず、世界中の人々に数多くの感動と癒しを届けてくれることだろう。
写真:©中嶌英雄
取材:Korepo(KOREAREPORT INC)
◆Lim Hyung Joo JP Weblog http://blog.livedoor.jp/hyungjoo_jp/