怒った仁祖
2人の王子の生活は、こまめに仁祖に報告されていた。昭顕の振る舞いは仁祖の気分をひどく害していた。
また、「昭顕が帰国したら、仁祖は王の座を下ろされる」という噂まで流れ、それが一層彼の気持ちを複雑にした。
「昭顕の奴は、憎き清にすっかり飼いならされている……」
仁祖がそうした感情を抱いているとは知らない昭顕。彼は1645年にようやく朝鮮半島に戻ってこられたが、帰国するとすぐに父に向かって、清の内情や西洋文化のすばらしさを語りかけた。
「我が国の文化は格段に劣っています。これからは、清や西洋の文化を積極的に受け入れていきましょう」
嬉々として報告を続ける昭顕は、仁祖の表情が曇っているのに気づかなかった。そして、清から取り寄せた器具や書物を見せると、仁祖の怒りは頂点に達してしまった。
「この裏切り者め! 我が国の誇りを踏みにじった清に魂まで売り払ったのか。もうお前の顔は見たくない。ただちに立ち去れ」
仁祖はどなりつけると、近くにあったすずりを昭顕の顔に向かって、思いっきり投げつけた。
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