韓国時代劇の歴史背景がわかりやすく説明されているのが『新版 知れば知るほど面白い 朝鮮王朝の歴史と人物』(康煕奉〔カン・ヒボン〕著/実業之日本社発行)である。この本の一部を掲載して、韓国時代劇の理解に役立つ知識を紹介しよう。第6回は「『トンイ』の主人公」だ。
『新版 知れば知るほど面白い 朝鮮王朝の歴史と人物』(康煕奉〔カン・ヒボン〕著/実業之日本社発行/1000円+税)
ハン・ヒョジュが語る
ドラマ『トンイ』の主人公となった淑嬪〔スクピン〕・崔〔チェ〕氏は、地味で歴史の中に埋もれていた。つい最近まで、韓国でもその存在を知っている人はほとんどいなかった。
しかし、ドラマの影響はすさまじい。知名度は一気に上がり、今では「あんな女性になりたい」とあこがれの対象になっている。
彼女のどこが現代女性にアピールしているのか。
それはまさに、底辺から最高位まで信じられないほどステップアップしたシンデレラだということ。確かに、長い朝鮮半島の歴史の中でも、淑嬪・崔氏ほど人生を一気に逆転させた女性は珍しい。
初めは、宮中で水汲みをする下働きだった。この身分では、王の尊顔を拝する機会は永久に訪れない。
しかし、現実には粛宗〔スクチョン〕は淑嬪・崔氏を側室にして、男子までもうけている。この男児が後に英祖〔ヨンジョ〕として即位し、淑嬪・崔氏は王の母になった。
さらに、英祖がすごいのは、朝鮮王朝27人の王の中で、51年7か月という最長在位期間を達成したこと。長寿の王を産んだのも淑嬪・崔氏が誇りとすることだろう。
それにもかかわらず、彼女が最近まで“無名”のままでいたのは、その資料がほとんどなかったからだ。
この点に関しては、『トンイ』で淑嬪・崔氏を演じた主演女優のハン・ヒョジュもこう語っている。
「淑嬪・崔氏について詳しくなかったので、撮影前にぜひ調べなければいけないと思い、資料を集めようとしました。しかし、彼女について書かれた資料が本当になかったんです。インターネットを見ても出ていませんでした。彼女についての資料がなかったので、私も調べるのが大変でした。でも、このドラマの後には、彼女を題材にした漫画、小説、ドキュメンタリーがたくさん作られました。ドラマの影響って本当に大きいですね」
ハン・ヒョジュ自身もドラマの反響に驚いていた。その彼女は、淑嬪・崔氏を演じて、そこから何を感じ取ったのだろうか。
「淑嬪・崔氏は、強い心を持って運命を変えていった女性です。とても尊い心を持っていましたし、正しい道を歩いていきました。私が演技をするにはすばらしすぎる人だと思いました」
現代社会で淑嬪・崔氏が大いに脚光を浴びたのは、ハン・ヒョジュが言うとおり、彼女が“強い心を持って運命を変えていった女性”だったからかもしれない。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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