『お父さんが変』のように、親子の葛藤をユーモラスに描いたホームドラマは『ソル薬局の息子たち』『母さんに角が生えた』など鉄板のジャンルだが、『お父さんが変』がここまで面白いのは、3人の個性的な俳優が光っているからだ。
キム・ヨンチョルの声にしびれる
ここで紹介したい3人とは、キム・ヨンチョル、キム・ヘスク、イ・ユリだ。
夫婦を演じているのがキム・ヨンチョル(ハンス役)とキム・ヘスク(ヨンシル役)で、娘のヘヨンに扮しているのがイ・ユリだ。
まずはキム・ヨンチョルから。
『王女の男』で世祖(セジョ)を演じた彼の重厚な演技が忘れられない。胸に秘めた特別な思いを顔の表情で見せるときの演技力がピカイチだ。
『お父さんが変』でのハンス役も、死ぬまで明かせない重要な秘密を抱えているという設定。こういうキャラクターをキム・ヨンチョルにまかせればピッタリである。
さらに、彼の持ち味で惚れ惚れするのが、よく響く低音の声。彼のドラマを見るときは、ぜひ字幕で生声をじかに聞きたい。
キム・ヘスクといえば、『冬のソナタ』のユジンの母親役があまりに有名だ。
このように、テレビドラマでは「良妻賢母」型の母親役を演じることが多いのだが、映画になると、一転してクセのある変わった女性の役が増える。
たとえば、『10人の泥棒たち』や『暗殺』。こうした映画で見せた怪しいマダムという役も、キム・ヘスクの巧みな演技力で実にサマになっていた。とても引き出しが多い女優なのである。
今回のキム・ヘスクはキム・ヨンチョルと一緒に夫婦役を演じているが、この夫婦は従来の韓国ホームドラマの中では、むしろ異色の組み合わせと言える。それは、「泥臭く演じても、どこかアカ抜けている」ということだ。
これは、2人の洗練されたセンスがうまくかみ合っているからに違いない。そういう意味では、夫婦役のベストカップルと言える。
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