近年は、人気芸能人やアーティスト、ファッションモデルたちの中にも体の一部に「タトゥー(TATOO)」を入れている人が目立っている。とくに肌の露出が多くなるこの季節は若年層を中心にアクセサリー感覚で施術にチャレンジする者も増えている。
かつては、「入れ墨(刺青)」と呼ばれ暴力団の象徴という危険で暗いイメージが先行していたが、最近は数年で消える「ファッションタトゥー」や「プチタトゥー」など、気軽に試せる施術法が定番となっている。
そして「身体髪膚」を「毀傷」することがタブーである「儒教の国」韓国でも、今では日本とほとんど同じ状況になっている。
K-POPアイドルやアーティストの中にも、「JYJ」のジェジュンや「BIGBANG」G-DRAGONや「BIGBANG」SOL(テヤン)を始め、「SS501」キム・ヒョンジュン(リダ)、元「2PM」のパク・ジェボム(JAY PARK)など、アイドルを中心にタトゥーを愛用する芸能人が増えている。
ヒップホップやR&B系の音楽をやっているアーティストの中には逆にタトゥーを入れていない人のほうが少ないほど。
2000年代以降は、韓国でタトゥー人口が急激に増え、今では100万人を超えているとも言われている。オシャレ好きな若者の間では「ファッションアイテム」として すっかり定着した感じがしている。
一方、日本でも年配の方々はタトゥーではなく「入れ墨(いれずみ)」と発音する人が多いが、これは韓国でも同じだ。肌感覚としては、30代半ば以降の世代には「タトゥー」ではなく、「文身(ムンシン)」と呼んでいる人のほうが多いようだ。
イメージとしては日本と同じで、漢字語の「文身」は「犯罪的」、横文字の「タトゥー」は「ファッショナブル」と相反するニュアンスが共存している。同じ行為にも関わらず、呼び方ひとつでこれほどの違いを見せる訳だが、実際に法律的な規制はあるのだろうか。
実はその答えもとても曖昧で、ひと言で言うなら、「免許を持たない人にタトゥーを入れてもらうことは法律違反ではあるが、日韓の習慣として黙認されている行為」ということになる。
公衆銭湯で入れ墨をした者の入場を禁じるところが多いのも、厳密に言えばこのような理由がある。
法律が厳格に適用されれば、医師免許を持たない彫り師が施術すれば医師法違反で取り締まりを受ける可能性があるが、古来より伝統的に行われてきた人類共通の施術でもあるので、厳しく規制することは日韓両国の社会には馴染んでいないようだ。
実際にも、タトゥーとほぼ同じ施術である「アートメーク」ショップの経営者が「法律違反」と判例される一方で、「CHANEL」など世界的なファッションプランドが彫り師とのコラボレーションを行うようなトレンドも起きている。
また、韓国の国会議員の中でも一部の政治家は、タトゥー専門学校などの養成機関を整備し合法化を進めようとするが、まだまだ反対勢力が多いため、法律改正には至っていない。
しかしこのような曖昧な法律のせいで、彫り師たちが被る社会的被害も少なくない。
アパレルや芸能界とコラボレーションをした時は「芸術家」と呼ばれ、取り締まりに摘発された時はただの犯罪者に成り下がってしまうからだ。
このような矛盾を日韓両国の政府も早急に認識して、「タトゥー」の存在意味を再定義する必要があると言える。
アルプスの氷河から発見された5300年前の「アイスマン」やロシアで発見された2500年前のアルタイ王女のミイラの体にも派手に施されていたように、「タトゥー」は数千年の間、受け継がれてきた人類の「手芸」なのだ。
「タトゥーは一部のチャラい奴らの遊び道具だ」と批判している者もいるが、小泉又次郎(元総理大臣である小泉純一郎氏の祖父)のように、入れ墨を入れながら政治家として活躍した人物もいる。
また、安室奈美恵のように、愛するに息子の名前を入れ墨にして世間の荒波を乗り越えてきた女性もいる。
個性を大事にする今の時代、もしかすると、日本よりも先に「儒教の国」韓国で、「タトゥー」が合法化される日が来るかもしれない。