韓流は日本に完全に定着し、韓国のスターは日本でも広く受け入れられている。男優でも女優でも、スターをよく見ていて、日本の芸能界との違いはどんなところに現れているだろうか。今回は、「スターの生まれ持った資質」ということを考えてみたい。
主演女優の条件
古い話から始める。
2002年のことだ。この年はFIFAワールドカップが日韓共催で開催された画期的な時期だったが、テレビの世界でも日韓共同の作業があった。日韓で同時に放送されたドラマ『フレンズ』がそれだ。
ウォンビンと深田恭子が共演した。見た人も多いだろう。
あのドラマを見た韓国の芸能関係者がビックリしていた。
「日本では、あれほど太めでも主演女優になれるのか」
そういう意見だった。
確かに、当時の深田恭子は今とは違ってポッチャリ系だった。特に、街中を走る場面で太めの体型がかなり目立っていた。
それで、韓国の芸能関係者は率直な意見を述べたわけだが、彼の驚きは「日韓における芸能人の資質の違い」を端的に表していた。
高い身長の女優たち
韓国では、新人が選抜されるときに、男女を問わず身長とスタイルが優先される。男性なら180センチ前後、女性も165センチ以上でスタイル抜群というのが、新鋭が選ばれる際の目安と言っていい。
「顔がいい、だけでは駄目なんですよ。何よりも、見栄えの良さが重要です。そのためには、男性なら高い身長と鍛えられた身体、女性ならスラリとした長身が欠かせないですね。わかりやすくいえば、スター候補生はいくらでもいるんですよ。その中から、まずスタイルがいい若者が選ばれていく傾向が韓国は強いですね」
芸能界に詳しい知り合いはそう力説していた。
実際、韓国の人気女優たちを見ると、モデル並の体型をしている女性が多い。身長を調べると、チェ・ジウが174センチ、ハン・ヒョジュが170センチ、ハ・ジウォンが168センチとなっている。これだけの身長を持った女優は、日本にはあまりいないかもしれない。
その理由は、はっきりしている。韓国では身長が高い女性が女優として登用されるのに対して、日本ではそういう条件が付かないからだ。
日本的な感覚でいうと、むしろ身長が高すぎる女優は敬遠されるかもしれない。男優より高いのはちょっと……という意識も日本の芸能界には残っている。
韓国女性が好きな褒められ方
もともと韓国人は、日本人より体格が大きかった。
その理由は何か。
古くから肉食であったことも関係しているだろう。また、韓国の土壌は日本よりカルシウム分が多いことを根拠に挙げていた研究者もいた。
結果的に韓国では体格に優れた人が一目置かれる傾向があり、それが芸能界では顕著に現れている。
一方の日本は「カワイイ」という大衆文化が人気を集め、かつてのアイドルや今のAKB48を見ても、小柄な女性がかなり多い。
そういう女性がトップアイドルになっていくということは、日本では「スタイルより可愛さ」が優先されるということなのだろう。
かつて韓国の女性に言われたことがある。
「韓国では可愛いと言われても女性はあまり喜ばないかもしれません。セクシーとか、スタイルがいいね、というのが女性が喜ぶ褒め言葉なんですよ」
その言葉がずっと頭に残っていた。
別次元のような感覚
言葉の意味を本当に実感したのは、2004年3月にチェ・ジウの記者会見が東京・渋谷のNHKで開かれたときだった。
『冬のソナタ』がNHKの総合テレビで放送されることになり、それを記念してチェ・ジウが来日したのだが、会場となったスタジオにチォ・ジウが登場した瞬間に、「オオー」という歓声が記者の間から沸き上がった。
登場したチェ・ジウのスタイルの良さ。高い身長に小さな顔が印象的だった。
長く日本の芸能界を取材していた記者にとっても、チェ・ジウを見たときには別次元のような感覚があったのだろう。
それが「オオー」という歓声に表れていた。
日本にも背が高くてスタイルがいい女性はたくさんいる。しかし、そういう女性がアイドルになっていく割合は高くない。
韓国はまったく別である。
男性でも女性でも、身長が高くないと最初から選ばれない。生まれた持った資質がモノを言う世界なのである。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
コラム提供:ロコレ
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