【時代劇が面白い】『不滅の恋人』の歴史がよくわかる!

『不滅の恋人』は韓国で放送時の原題が『大君~愛を描く』だった。この「大君」というのは、国王の正室が産んだ王子のことを意味している。そして、このドラマに登場する大君のイ・ガンとは、歴史上では首陽大君(スヤンデグン)のことだ。この人物は後に世祖(セジョ)として7代王になった。

決心した首陽大君
首陽大君は朝鮮王朝最高の名君と称賛される4代王・世宗(セジョン)の二男として、1417年に生まれた。
そんな首陽大君が35歳だった1552年のことだ。
世宗の長男であった5代王・文宗(ムンジョン)が世をさり、彼の長男である端宗が11歳で6代王となった。
この時点で野心をたぎらせたのが首陽大君だった。
彼は、幼い王の端宗を補佐する皇甫仁(ファンボ・イン)と金宗瑞(キム・ジョンソ)が、王の補佐を理由に政治権力を独占していることで王権が弱体化していると思い、敵意を抱いていた。
決起をしようと考えていた首陽大君は、自分の同志となる高官たちを自邸に集めて激しく議論を重ねた。
しかし、いざとなると優柔不断な者も多く、何かと理由をつけて逃げ腰になる者もいた。その雰囲気によって一度は首陽大君の決意が揺らだが、最終的に決心した彼は、2人の従者を連れて金宗瑞の屋敷に向かった。


陽が沈みかけた頃だった。
2人の従者を連れて金宗瑞の屋敷にやってきた首陽大君は、門のところで数人の男たちと話していた金宗瑞の長男の金承珪(キム・スンギュ)に声をかけた。
「お父上にお会いしたい」
金承珪はすぐに屋敷の中に入っていった。
しばらくして、屋敷から金宗瑞が出てきた。
首陽大君は金宗瑞から中に入るように誘われるが、多くの武士に待ち伏せされていることを警戒して中に入ろうとしなかった。
いつまでも屋敷の中に入ろうとしない首陽大君の様子を見た金宗瑞は、自ら彼に近づいていった。
首陽大君は「これを読んでほしい」と言って書状を取り出した。それを受け取った金宗瑞は、辺りが暗かったので月明りに照らして読もうとした。
その隙を見逃さなかった首陽大君が合図を送ると、一緒に来ていた従者の1人が、金宗瑞めがけて鉄槌を振り下ろした。

不意打ちを受けた金宗瑞がその場に倒れ込んだ。
そのときに、金承珪が父親を守るように覆いかぶさった。
しかし、もう1人の従者が刀で2人を切りつけた。
金宗瑞を排除した首陽大君は王である端宗のもとへ行き、「国の乗っ取りを狙っていた金宗瑞を処罰しました」と報告した。
その後、王命を出させて高官たちを招集させると、首陽大君の側近が、首陽大君に批判的な高官たちを殺害した。
それによって、政権の高官たちはすべて首陽大君の息のかかった者たちになった。
さらに、首陽大君は1455年に端宗を退位させて、7代王・世祖(セジョ)として即位した。
このように甥から王位を奪った首陽大君。
後には端宗を殺害している。
いくら野心を叶えるためとはいえ、あまりに非道な男であった。

文=康 大地(コウ ダイチ)
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